思い出の場所2 ページ3
「なんや、似合わへんか?良太郎と同じ顔やから大丈夫かと思たんやけど」
「や、違くて!そういう格好してる時って、良太郎くんが前提としてあるから…キンさん単独となると不思議な感じが…」
__そう、不思議だ
もたつかずにチケットを買う姿だとか、さりげなく車道側を歩いてくれるスマートさだとか、今のキンタロスは誰がどう見ても“人間”でイマジンだとは欠片も思われないだろう
イマジンが誰しもこうであれば、イマジンと人間の共生も夢とは言い切れないが実際は厳しい
イマジンは自己都合のみで活動する
キンタロス達の方が珍しいのだ
元を辿れば同じ“人間”なのに__…
「A」
「へっ…いてぇ!?」
呼ばれた名前に我に返れば、目の前には大きな手
理解が追いつく前に、ペシンと小気味良い音がしてAは額を弾かれた
その痛みに額を押さえれば、ニヤリと笑うキンタロスと目が合った
「帰ってこれたか?」
「えぇおかげさまで…。キンさん、もうちょっと加減してくれると嬉しいんだけど…!」
“穴開くかと思った”とAが抗議すれば、キンタロスは楽しそうに頭を撫ぜる
それに対してAが声を上げれば、キンタロスは今度は可笑しそうに声を上げて笑った
「もーー!!なんなのキンさん今日は!テンション高めだね!?」
「ははっ、そらそうやろ。Aとデート、出来るんやからな」
「デッ…!!」
思ってもみなかった単語がキンタロスの口から発せられる
不意を突かれたAは口をパクパクさせると、キンタロスは今度はズイ、と自身の顔をAへと寄せた
「ッ、!!」
「デート、やろ?」
「で、デート…です、はい…」
「ん、良い子」
キンタロスとは言え、その顔は良太郎で
その良太郎は所謂“モテ顔”と呼ばれる整った顔つきで
そんな彼に顔を寄せられたら、反射的に心臓が高鳴ってしまうのも必須で
Aは慌てて肯定すれば、その答えに満足したキンタロスはニコリと笑ってAの頭を再び撫でる
「さ、行こか」
す、と自然に差し出される大きな手
Aは戸惑いながらもそっとその手に触れれば、ギュッと力強く握られる
反射的にキンタロスの方を向けば、満面の笑みでこちらを見ていて
「__ッ、!!心臓に悪い!!」
「ははっ、そりゃあ何よりや」
屈強なキンタロスからすれば、Aが小突いた所で子猫が戯れているようなもの
分かっていても、この気恥ずかしさを掻き消すにはこれしか思い浮かばなかった
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作者名:茉南 | 作成日時:2024年3月16日 15時