思い出の場所1 ページ2
「＿＿ほら！キンさんこっちこっち！！」
目的地に着いたAは嬉々とした表情で振り返り、キンタロスへと声を上がる
普段あまり見せないAのはしゃぐ姿に、キンタロスも知らず知らずのうちに口角が上がっていた
「ははっ！A、水族館は逃げへんよ？」
「分かってるけど！久しぶりだし、連日特訓続きだったし！息抜きしたっていいでしょー！？」
「そない当たり前やんか。Aが頑張っとぉのはよく知っとる。こないで気晴らしができるんなら、いくらでも付き合うで？」
＿＿いつかの、約束
“もう一度、この場所へ”と願ったのはどちらからだったか
否、どちらもが望んだ
“あの時”はそれが叶うとは露ほど思っていなかった
彼女の背中を押すために言った言葉が、現実となりこうやって再び訪れることが出来たのだ
今思い出しても、Aのあの時の言葉や表情はズキリと胸を痛める
二度と叶うことのない口約束にならなくて本当に良かったと、はしゃぐAを見ながらキンタロスはそっと胸を撫で下ろした
水族館の入り口へと到着するとAはまた更に目を輝かせる
それを見て“年相応だ”とキンタロスが思っていると、思い出したようにAがこちらを振り返りながら口を開いた
「そういえばさ。今回のキンさんの人間化、結構サクッと出来たんだよね。実体化したおかげかな」
「精神体の時と、そない変わるモンなんか？まぁAの負担にならへんかったんなら何でもええんやけど」
「なんていうのかなぁ…。前はさ、良太郎くんに憑依してた状態だったじゃん？１つの体に２つの魂が入ってるってヤツ。だからイメージを作り上げるのに結構集中力が必要だったんだけど、今回はひょいっと済んじゃって。慣れもあるのかもしれないけど」
「へぇ、さすが“神様”は違うなぁ」
「ちょっ、キンさん！？茶化さないでくれる！？」
「ははっ、冗談や」
「いやもはや冗談でもないあたり、何とも言えない…」
珍しいキンタロスの冗談に肩を落としながら、Aはチラリと視線をキンタロスへと向ける
人間化した際にキンタロスは見慣れた着流しを着ていたのだが出掛けるからと、わざわざ良太郎に服を借りて着替えてきたのだ
憑依した状態のキンタロスは服を着ていた時もあったが、あくまでもそれは“良太郎”であって
“キンタロス”が和服以外を着ているのはなかなか見慣れない
そんなAの視線に気付いたキンタロスは困ったように苦笑いを浮かべた
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作者名：茉南 | 作成日時：2024年3月16日 15時
