決して相容れない ページ1
「__お前、余裕だな」
夜の廃工場に響く声
月明かりに照らされたその姿は人間とは似つかない
異形の者__イマジンに話しかけられたコウはボンヤリと空を見ていた視線をイマジンへと向けた
「そう、見える?」
積み重なった廃材の上に座り、そこからイマジンを見下ろすコウの表情はどこか虚ろだ
そんなコウへの元へイマジンは飛び上がり、隣へと着地する
「あそこで一気に潰してしまえばよかったものを。“カミサマ”とやらも覚醒してしまっては面倒だろうに」
「力はもちろん、Aは完璧な形で手に入れたいからね。
__普通なら、気が触れて廃人になってもおかしくないのに。Aは自分を律し、叩き上げ、強くなっていった。『神』の力無しにだよ?あの子は特別だ。どうやってでも、自分のモノにしたい」
そう熱弁するコウの表情に、どこか異常だ、とイマジンは朧気に感じた
確かにどんな現実を目の当たりにしても立ち上がってくるAと呼ばれる女は“強い”と思う
だが、そこまで執着するほどか、とも思えるのだ
__なにが、あそこまでコウを執着させるのか
「……程々にしろよ。万が一が起きてしまった場合、お前は__」
注意したところで、コウは止まらない
それをイマジンも分かってか、呆れたような口調で言うに留めた
だが、イマジンの言葉は最後まで続かなかった
イマジンの見やるその先、コウの表情に思わず言葉を詰まらせたからだ
その表情は、見覚えのあるモノ
「__俺は、何故ここにいる…?」
「は…?」
「俺、は“ここ”にいていいのか?“ここ”が俺がいるべき場所か?俺はなんのために「コウ!!」
突如響いた叫び声に、コウはビクリと肩を震わせる
そのまま固まったように動かないコウとイマジン
どれくらい経ったか、先に口を開いたのは__
「…コウ。俺が、分かるか?」
「__?お前、何言ってるんだ?」
は、と片眉を上げどこか小馬鹿にしたような表情を見せるコウ
そんな顔を見せられれば気に触るのが普通だが、イマジンは肩の力を抜くように溜め息をついた
「…まぁいい。肝を冷やさすな。これからが本番なんだろう?」
「あぁそうだ。あの男を消して、Aを奪う。そうすれば俺は…本物の“神”となり得る!!」
「その後、あの女は?」
「Aはずっと一緒だよ?ずっと俺の隣、ずーっと…ね?」
「__ッ、」
ぞわり
背中に強い寒気が走ったのは__…
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作者名:茉南 | 作成日時:2024年3月16日 15時