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「……マルコ、兄？」
かけられた毛布の上からそっと包み込むのはマルコ兄の腕だ
頭からすっぽりと毛布に覆われてしまっているが、後ろから柔らかく抱きしめられているのを感じる
その意図が分からなくて振り返ろうとすれば、降ってきたのは少し寂しそうな声
「今日は、歌わねぇのかぃ？」
「歌？」
あぁ、そういえば
不寝番の特権、とか言われていたんだっけ
「マルコ兄も聞きたいの？」
「今日は一番の特等席じゃねぇか」
“何処からか聞こえてくるってヤツより、目の前で聞けるのが特権じゃねぇかよぃ”と言葉を続けるマルコ兄に思わず吹き出すと、それに気付いたマルコ兄が不機嫌そうな声をあげた
「…なんだよぃ」
「いや…なんていうか。マルコ兄にもそんな感覚あったんだなって」
「ウルセェ。
＿＿あぁでも、切ねぇのは聞きたくねぇな」
「え？」
クスクスわらっていたが、マルコ兄のその言葉にピタリと笑いが止まる
そのまま振り返れば、どこか困ったような表情を浮かべたマルコ兄と目が合った
「もう…だいぶ前だな。お前の歌を初めて聞いた時だ。サッチや他の連中が言ってたように、確かに聞き惚れる歌声だった。
…だがなぁ。俺にはあん時、どうにも切なく聞こえちまったんだよぃ。まだあん時はお前も葛藤があったから仕方ねぇのかもしれねぇが…あんな歌声は、正直…もう聞きたくねぇ」
「マルコ兄…」
ギュ、と少しだけ抱きしめられる力が強くなる
毛布のせいでマルコ兄の表情は見えない
私の表情も、きっとマルコ兄からは見られない
ねぇ、それ
どんなカオして言ってるの？
「なぁ、A。お前、今はもう寂しくねぇか？いつかのお前の言葉、その通りに受け取ってもいいか？
＿＿A、お前はいつも無意識に我慢をするだろ。それでいて、何ともないように振る舞うだろ。俺はお前に、この船でそんな事をしていて欲しくねぇんだ。
俺だけじゃねぇ。親父も、他の連中もきっと同じ思いだ。それを踏まえてもう一度聞くぞ。
A。お前は寂しくねぇか？」
＿＿いつかの、記憶が蘇る
“あの時”“あの時”“あの時”
いくつも、浮かんでは消えていく
“怖かった”“苦しかった”“悲しかった”
いくつもの感情が次々と湧き上がってくる
自己嫌悪に陥ったし、いっそのことこの世から消えてしまおうとさえ考えた
＿＿そんな時に響いたのは、私へと向けられた真っ直ぐな言葉、真っ直ぐな瞳
それらは今でもハッキリ覚えてるんだ
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茉南(プロフ) - れなさん» 読んでいただきありがとうございます！4月から生活環境が変わり、作品に向かえる時間が大幅に変わってしまいました。それでも待っていただける事に感謝しながら最後まで書いていきたいと思います。温かいコメントありがとうございます(^^) (5月7日 23時) (
レス) id: a9242dc9a9 (このIDを非表示/違反報告)
れな(プロフ) - 本当に素敵な作品です大好きです。文才が天才すぎます。お忙しいとは思いますがお時間のある時に続きの更新よろしくお願いします。本当に大好きすぎるので完結までついていかせてください。 (5月7日 14時) (レス) id: 5c55cc0d78 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉南 | 作成日時：2024年3月6日 17時
