乗り越えると決めた今4 ページ48
雁字搦めだった糸がするすると解れていく
無意識に張り詰めてしまっていたようだ
忘れてはいけない
自分はもう“独り”ではないということを＿＿
「ダメだねぇ、私」
ポツリとこぼれた言葉
その言葉に真っ先に反応したのは、Aの手首を掴んでいた侑斗だった
真意が掴めず、侑斗が眉間の皺を深くすると、それに気付いたAは小さく笑った
「…なんだよ」
「また、難しく考えちゃってたなぁって思って」
＿＿“あの頃”とは違うのだ
流れる時間も、環境も、何もかも
独りで耐えてた時とは違う
支えてくれる、助けてくれる、共有してくれる
“仲間”がすぐ側にいるということ
何度も助け、助けられ
理解していたつもりだったが、焦りは視野を狭めてしまっていたようだ
「… A？」
「うん、そうだよね。侑斗や良太郎くんやモモさん達がいる。
＿＿私はもう、“独り”じゃないんだった」
そうAが口にすれば、侑斗も良太郎も安心したように表情を緩める
侑斗がそっと手を離すと、Aはグッと勢いよく立ち上がった
「まずは、10秒」
「え？」
「次は20秒。10秒ずつ、長くする」
「A？」
「最低でも1分。できるならそれ以上。良太郎くんや侑斗、モモさん達が手伝ってくれるなら短時間でも絶対仕留める。無駄になんかしない」
クルリと2人の方へ向きを変えると、Aは満面の笑みを浮かべた
その表情には、もう暗い感情は乗っていない
「行こう、2人とも。特訓の続き、やろ」
「A、もう少し休んでからでも」
「倒れたら、助けてくれるんでしょ？」
ふふ、とAは悪戯に笑う
それを見た侑斗は徐に立ち上がると、侑斗の行動に不思議そうに首を傾げたAの頭をグシャグシャと撫で回した
不意を突かれたAは抵抗する間もなく、されるがまま揺さぶられる
「ちょっ、侑斗！！グシャグシャだし、そんな揺さぶらないでよ！酔う！！」
「はっ、ガキがいっちょ前に大人ぶってンじゃねぇよ」
「私と２つしか違わないでしょーー！？勝手に大人の余裕出してんじゃないっての！」
「オコサマは大人しく助けられてろ」
「ふはっ、素直じゃねぇの！」
Aが笑えば、それに反応して侑斗はさらに撫で回す
そんな2人のやり取りを良太郎は優しそうな眼差しで見守る
この関係が、成り立っているのだ
“いつか”が来ようとも、それまではこうやって笑い合える
＿＿考えを、きちんと改めよう
“独り”じゃ、ないんだ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 59人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
茉南(プロフ) - Aさん» 読んでいただきありがとうございます(^^)ラストまでどうなるか…楽しんで読んでもらえるよう頑張っていきます！亀更新ですが、これからもよろしくお願いします！ (10月24日 0時) (
レス) id: a9242dc9a9 (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 侑斗オチだと嬉しいです！いつも楽しく読ませてもらってます！完結までがんばってください (10月23日 0時) (レス) @page34 id: f296b2ed74 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：茉南 | 作成日時：2023年3月9日 0時
