狂いそうなほど長い時間の先にあるのは4 ページ4
「＿＿死郎、もう疲れたの」
目に、耳に入ったのは、地面に倒れている死郎と、それを抱き抱えるソラの姿と語りかける声
空間を飛ぶ事は一瞬であるが、勝敗を決めた決着の一撃もまた一瞬
幽霊列車から飛んだAの目に飛び込んできた光景はちょうど、全てが終わった瞬間だった
倒れても尚、諦めないと言う死郎にソラは“自分はもうずっと昔に死んだ人間だ”と再認識させるように答える
ソラを想い、400年の間たったひとつの願いを成就させるために死郎は奮闘してきた
道半ばで終わってしまったソラの人生を、2人の幸せな人生を作るために
「…あなたが私を想ってやった事は分かってる。でも…疲れたの。あなたが忘れてくれたら…誰かが、止めてくれたらって＿＿…」
そう言いながら目線を下げると、その先のソラの手には古めかしいライダーチケットがあった
パラパラとソラの手から落ちるチケットを見て、死郎は信じられないというように目を見開く
自分がやってきた事と、彼女は真逆の事をやったのだ
動かない身体を懸命に動かし、顔を上げると死郎はソラと視線を交えた
「……ソラ…、どうして…ッ！」
「死郎…もう、苦しまないで。これからはずっと一緒に……静かに…ッ」
「………ソラ……」
＿＿彼女の願いは“生きること”ではなかった
ただ、静かに“逝きたい”という切なる願いだった
“できるなら、あなたと一緒に”
ソラの嗚咽が、死郎にはそう聞こえた
ならば、自分がやってきたことは
否、違う
ソラのために、本当に自分がしなければならなかったのは＿＿…
「…死郎…！」
ずるり、とゆっくり死郎の手が滑り落ちる
閉ざされてしまった瞳に、ソラはもう映らない
死郎を抱き抱えたソラの啜り泣きが辺りに響く
事の成り行きを静かに見守っていたAだったが、ソラのその姿に胸が苦しくなっていた
勝負事とはいえ、誰かが泣いてしまうのであれば結果がどちらに転んだとしても“これで本当に良かったのか”と迷いが生じてしまうものだ
自己嫌悪に陥ろうとしていたAだったが、聞こえた走行音に顔を上げるとそこには異空間からやってきた幽霊列車が見てとれた
「＿＿ありがとう…」
死郎とソラを乗せて、去っていくまでのたった数秒
“見間違いだ”と“空耳だ”と言われてしまえはそれまでかもしれない
だけど、それはしっかりAへと届いた
願わくば
ふたりがゆっくり静かに逝けるように
また、いつの日かふたりが巡り合うように＿＿…
願わずにはいられなかった2人へ→←狂いそうなほど長い時間の先にあるのは3
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茉南(プロフ) - Aさん» 読んでいただきありがとうございます(^^)ラストまでどうなるか…楽しんで読んでもらえるよう頑張っていきます！亀更新ですが、これからもよろしくお願いします！ (10月24日 0時) (
レス) id: a9242dc9a9 (このIDを非表示/違反報告)
A(プロフ) - 侑斗オチだと嬉しいです！いつも楽しく読ませてもらってます！完結までがんばってください (10月23日 0時) (レス) @page34 id: f296b2ed74 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉南 | 作成日時：2023年3月9日 0時
