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「A」
呼ばれた声にハッと我に返る
現実逃避したかったのか、意識が違うところに出向いてしまった
でも、この綱の感触も綱から伝わる波の動きも、全て本物であり現実だ
私がマルコ兄に頼んだのは、“最後に綱を離す役を担う事”
マルコ兄も他のみんなも最後まで渋っていたけれど、最終的には私の意を汲んでくれた
これは私の我儘
だからこそ、途中で投げ出すなんて真似はできない
船尾の欄干に足をかければ、視界は広がりこの大きなモビーでも水面までは見渡せる
そうすれば、自然とツキナさんと目線が合った
「ツキナさん」
呼んだところで返事が返ってこないのは分かってる
無言で睨まれることは分かっていた事
彼女が私の存在を最初から疎ましく思っていた事も、今はもう理解してる
＿＿それでも、これだけは最後に伝えたかった
「＿＿私、ツキナさんの事、大好きだったよ。」
全てが仮初で、作られたモノだったとしても
あの柔らかい雰囲気も、表情も
一緒に過ごした時間は確かにそこに存在していた
その時共有できた時間は紛れもなく本物だったから
この気持ちだって、紛れもない“本物”だ
「……は…？」
「いっぱい。いっぱい助けてくれてありがとう。楽しかった」
「ッ、！今更…、今更そんな事ここで言われても…ッ！！」
見下ろすとツキナさんの表情が困惑している
この状況でこんな事言われたら、さすがにどんな人でも驚きはするだろう
だからこれは、私の小さな小さな復讐心
嫌いでもなんでもいい
少しでも動揺してくれれば、私のこの言動は意味あるモノとなるから
「……バイバイ、ツキナさん」
するり
掌から綱が滑り落ちる
するすると音もなく落ちていく綱は、命を繋ぎ止めていたモノ
それを、離した私は＿＿…
.
「させねぇよ」
掌から落ちた綱の先を掴んだ、力強い手
降ってきた声に驚いてそちらを向けば、そこにいたのはエースだった
驚いて目を見開く私を尻目に、エースは一度は掴んだ綱を躊躇なく手放した
綱は今度こそ重力に逆らう事なく落ちていき、最後に小さな水音を鳴らした
「エー…ス…？」
「お前はまだ真っ白でいい。“ソレ”をやんのは俺の役目だ」
人知れず震えていた手は、エースの大きな手に包み込まれる
そのぬくもりが張り詰めていた糸を切ってしまうのは必至だったんだろう
息を吸って、安堵感に包まれて、重圧から解放されて
＿＿そうしたらもう涙はどうやっても止める事が出来なかった
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茉南(プロフ) - はるさん» 読んでいただきありがとうございます！更新を待っていただける事、とても嬉しいです(^^)のんびりし過ぎて忘れられないよう頑張っていきたいと思っています（笑）これからもよろしくお願いします！ (2月15日 11時) (
レス) @page49 id: 6c919d248d (このIDを非表示/違反報告)
はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (2月15日 10時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - 雨衣さん» いつもありがとうございます(^^)そうなんですよー！原作はみんないなくなってて寂しくて(T-T)彼らを今後どうするか、ある程度考えているのですが…今が楽しくて悩み中です（笑）今後も楽しんでいただけたら嬉しいです！ (12月28日 0時) (レス) id: 936b383323 (このIDを非表示/違反報告)
雨衣(プロフ) - 毎週本当楽しみにしてます！アニメではサッチもイゾウ達もらいなくなるので寂しいんですけど手のなる方へではみんないるから本当癒しになります！！今後の展開が楽しみです！ (12月27日 21時) (レス) @page44 id: ab81a6b8c3 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - れなさん» 読んでいただきありがとうございます！文章を褒めていただき、昇天しそうです…。ちまちま書き進めていますので、のんびり待っていただけると嬉しいです(^^)これからもよろしくお願いします！ (12月19日 23時) (レス) id: a9242dc9a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：茉南 | 作成日時：2023年3月3日 11時
