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「……きらきら、ぼし」
それは私の世界の人なら誰でも知っているであろう曲
それがこの世界にも存在しているなんて
「……唯一、教わった事だ」
最後の一音が鳴り響く
それと同時にジョズ兄が紡いだ言葉
ジョズ兄はいつも、多くを語らない
だけどそこに見えた言葉を、私は口にした
「それは、お母さんに?」
「…あぁ」
ジョズ兄にとって、このピアノは“繋がり”だったようだ
普段そんな素振りを見た事がなかったが、人知れずこの古びたピアノを気にかけていたのだろう
「もう…顔も朧げだが。この曲を弾いて、歌っている母親の存在は…どうしても心の中のどこかに残ってた」
今日はジョズ兄がよく喋る
いつもは大きくて逞しい背中が、どこか小さく見えてしまうのは何故だろう
そして
“弾きたい”“弾きたい”と、
見えない言葉がその背中から懸命に発せられているように感じた
「きらきら星が、ジョズ兄とお母さんを繋ぐ…大事な架け橋なんだね」
「そこまで大層なモノじゃないが…」
「大層なモノ、だよ。大事な思い出」
そう言いながら“ちょっと失礼”とジョズ兄の横に移動する
鍵盤の真ん中を陣取り、端から端まで鍵盤に視線を巡らせた
そっと鍵盤に指を置くと、一呼吸入れてからゆっくりと旋律を叩く
流れ始めたその旋律に、気付いたジョズ兄は目を瞬かせた
「これは…」
「きらきら星変奏曲。元の曲は…確かフランスだったかな?さっきジョズ兄が弾いてたメロディは、私の国では有名な童謡なんだよ。こっちが、オリジナルなんだって」
出だしの有名な旋律
それが終わると同時に息を吸い込み、一気に鍵盤に指を滑らせる
しばらくピアノに触れていなかったけれど、指がちゃんと覚えていた
流れるように、駆けるように、弾けるように、包み込むように
__ジョズ兄の想い人に、届くように
そう願いながら弾いていれば、あっという間に演奏は終わりを迎えた
最後の一音を奏でてから、そっと鍵盤から指を離す
ほぅ、と小さく息を吐くと、控えめな拍手が辺りに響いた
そちらを向けば、少し気恥ずかしそうな表情を浮かべながらも拍手をしてくれているジョズ兄の姿
「『ああ、お母さん、あなたに申しましょう』」
どこかにいる、ジョズ兄のお母さん
貴女の想いは、ちゃんと息子さんに繋がっています
貴女は素敵です
私から、貴女に言いたい事があります
ジョズ兄をこの世界に、そして育んでくれてありがとうございます
私はジョズ兄が大好きだよ
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茉南(プロフ) - はるさん» 読んでいただきありがとうございます!更新を待っていただける事、とても嬉しいです(^^)のんびりし過ぎて忘れられないよう頑張っていきたいと思っています(笑)これからもよろしくお願いします! (2月15日 11時) (レス) @page49 id: 6c919d248d (このIDを非表示/違反報告)
はる - やば、めっちゃ最高…!!ゆっくりでいいので更新待ってます‼ (2月15日 10時) (レス) id: 41084e4d77 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - 雨衣さん» いつもありがとうございます(^^)そうなんですよー!原作はみんないなくなってて寂しくて(T-T)彼らを今後どうするか、ある程度考えているのですが…今が楽しくて悩み中です(笑)今後も楽しんでいただけたら嬉しいです! (12月28日 0時) (レス) id: 936b383323 (このIDを非表示/違反報告)
雨衣(プロフ) - 毎週本当楽しみにしてます!アニメではサッチもイゾウ達もらいなくなるので寂しいんですけど手のなる方へではみんないるから本当癒しになります!!今後の展開が楽しみです! (12月27日 21時) (レス) @page44 id: ab81a6b8c3 (このIDを非表示/違反報告)
茉南(プロフ) - れなさん» 読んでいただきありがとうございます!文章を褒めていただき、昇天しそうです…。ちまちま書き進めていますので、のんびり待っていただけると嬉しいです(^^)これからもよろしくお願いします! (12月19日 23時) (レス) id: a9242dc9a9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:茉南 | 作成日時:2023年3月3日 11時