■:小さなプライド ページ9
...
「いただきまーす。」
カフェにいたあの女性のことが頭から離れない。結局、慧くんを迎えに行く車の中でさえグルグルと頭の中を駆け巡っていた。
「あ、お弁当どうだった?」
「...うん、おいしかったよ」
「ふふ。よかった。来月も楽しみにしててね」
今夜の夕食は、この前雄也にもらった鯖の煮付け。それと、お弁当にも入れたほうれん草とトマトのサラダをテーブルに出した。
色鮮やかな緑黄色野菜は、体にいいからね。って言っても、俺はトマトを避けて食べるんだけど。
「あれ、どうしたの?慧くん。」
「あっ...んー」
モゴモゴと口を小さく開けて濁す慧くん。短い箸をさらに短く持って、お皿をつついている。
見るとそこには、テーブルに上がっていたトマトとほうれん草のサラダ。だが、
クリスマスカラーのそれ、俺と真反対の色に染まっていた。...ほうれん草か。
「慧くん、もしかして...ほうれん草嫌いだった?」
「んー...」
使えるようになった箸でちょいちょいっとほうれん草を退けている姿を見ると、好き嫌いにしか見えない。
おまけに、ツルンと滑るトマトをいつの間にか掴めるようになっていたから驚きだ。
「じゃ、じゃあ...こうしよ。」
少々大人気ない気もするけど、こればっかりはしょうがない。俺だって嫌いなものの一つや二つある。
綺麗に寄せられたほうれん草を自分皿へ招き、ゴツゴツと見えっぱなしのトマトと交換した。
「これでもう大丈夫。」
ポカンと目を大きく見開く慧くんは、きっとこう言うだろう。「怒らないの?」って。
仕方ない。俺はそれが言える立場じゃないのだから。
「そういえば、お弁当のはどうしたの?」
ふと思い出してそう問うと、途端に下を向いて俯く慧くん。ちょっと焦る。
「ゆ、侑李が食べたいっていったの!」
半ば強引に押し切ろうと、声をひっくり返してまでほうれん草嫌いを認めない慧くんには、小さなプライドがあったようだ。
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龍晴(プロフ) - 本当に、素敵な作品ありがとうございました。これからも、頑張ってください! (2018年10月18日 18時) (レス) id: 09f81ce775 (このIDを非表示/違反報告)
JUMPLOVE - とても心温まる作品だと思いました!今後も頑張ってください!!!!!! (2018年8月24日 1時) (レス) id: f4e667ae46 (このIDを非表示/違反報告)
フェアラーが跳びます(プロフ) - 感動しました! 他の作品も頑張ってください。 (2018年3月28日 11時) (レス) id: 8f4ea0c48a (このIDを非表示/違反報告)
nanami?(プロフ) - とても素敵な作品です!続きが読んで見たいです。 (2018年3月23日 15時) (レス) id: 6d821c8069 (このIDを非表示/違反報告)
名無し11746号(プロフ) - 未来が見てみたいです! とてもステキな作品ですね! (2018年3月17日 19時) (レス) id: 514045eef7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ゆりあ | 作成日時:2016年11月22日 21時