夏色なみだ【kota × kei】

＊ ページ38

＃こうた









ボン、と投げられた制服


まだ揺れる視界に目を瞑っていると、




慧「ほら、やるから」




Yシャツに袖を通したあとで、慧がボタンを締める。


いつもこんな感じ




宏太「…ありがと」


慧「いーえ、走るのだけはなしな？」


宏太「わかってるって」




これもいつものセリフ




慧「ほい、忘れもんない？」


宏太「うん、大丈夫。薬のんだ？」






入院中


最後の外出は、慧との夏祭り。




途中から記憶ないんだけど、


失神した俺をおぶって病院に戻ったらしい慧は


病院の前で先生たちに見つけられ、緊急手術。


あんなに早くドナーが見つかるなんて、『奇跡だ』って、先生たち言ってた。




俺も危なかったらしいけど、目を覚ますと目の前で仁王立ちする智先生を見て


事の重大さをあとで知った。




慧「宏太のかーちゃん、今度いつ帰ってくんの？」


宏太「んー、どうかな。いつもバラバラだから」




見てのとおり、…っていうか


あの日から約半年。


俺たちは必死に勉強して、高校生になった


まだ薬も必要だし、通院だってしてる。


サボって翔先生に怒られることだってある


けど、




慧「今度からピンポンなしで入るわ」


宏太「え、不法侵入」




互いの弱いところを補い合って、


今を一生懸命に生きてるんだ。

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