お隣さん ar×ym

■： ページ10

side*大貴









タッパーのやり取りが終わると、ココアを両手で包み、ふぅ、と息をつく山田さん。

俺もマグカップを持ってそれを飲んだりしてみるけど





……気まずい









大貴「テレビでも……見ますか。ね？」





マスクを外した山田さんの小さな口が少し動いたのを見て、リモコンを押す。


ソファーに座る山田さんを横から見ると、いやマスクの下も綺麗だわ。なんて独り言を零しそうになる。









.









テレビを見始めて少し経った頃……




芸人のボケにお互いちょっとだけ笑って、CMに入った。

時計を見上げると、時刻はちょうど零時になる頃で。





そうか、もうこんな時間だったと重い目をこすっていると……









『あなたの一番大切な記憶は何ですか＿＿』








ふいに耳に入ってきた、そんな言葉。



CMなんてただの番組のつなぎで、気にしないことがほとんどなのに。

何故だかその言葉が引っかかって、テレビに視線を戻す俺は、たぶん眠くて半目だろう。







大貴「え……」



半分開いた口から、息を吐くように声が出る。

重かった目はいつもより見開き、食い入るように画面を見つめる。



……だって、映画のCMでテレビ画面に現れた青年が…………









大貴「山田、さん……」




山田さんに、恐ろしく似ていて。


目だけちらりと山田さんを見ると、少し下を向いていて、でもどこかちょっと嬉しそうに







涼介「ふふっ、……バレちゃいましたね」




そんなことを言うと……

俺の方に体を向けて、






涼介「山田涼介です」


そう、綺麗に笑った。

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