お隣さん ar×ym

■：劣等感 ページ28

side*大貴









……嫌な予感ほど、当たってしまうもので





『有岡ー、昨日渡した書類できてるか？』

大貴「あ……っ、すぐに持っていきます！」



『有岡さん、この字これで合ってますか……？』

大貴「ぅあーっ、……ごめんね、すぐ直す」




頼まれていた書類の提出、後輩に引き継いだ文書のミス。

至るところから自分の名前が呼ばれ、社内を駆け回る。




『お前さっきから慌てすぎ。ミスが多いよ』

大貴「すみませっ……っ、」




足を組んだ課長が、遠くから俺を見る。

同じ部署の社員が、チラチラと俺を見るのがわかる。バレバレだっつーの


他の社員を挟んで注意をしてくる課長に、多少の苛立ちを覚え、

コピー室に駆け込む振りをして、自制した。









大貴「……やっべー…………」



落ち着け、俺

淡々と印刷される書類を眺めながら、機械に手を付き心を落ち着かせる。







数時間前……


大貴「……え、今日も来れないの？」

慧「ごめんね〜、明日は行くからさ〜」



間延びしたその声は、つい昨日の電話と全く同じもので。



大貴「……そっか、早く治るといいね」



会社に向かう前、

部屋の中で淡々と流れるテレビ画面には、星座占いが始まっていて



大貴「……最下位じゃん」



アナウンサーの申し訳程度の謝罪と、ラッキーアイテムなんだのって、

文句を垂れながらも律儀に最後まで聞いて、部屋を出た。






·





大貴「あー……俺のせい……？」



……なんて、どうしようも無い不安と、早く伊野ちゃん来ないかな、なんて思いが腹ん中に溜まる。


空気最悪のデスクにはどうしても戻りたくなくて、無駄にゆっくり歩いていた




……のが、間違いだったらしい。

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