頑張り屋さん ３

■： ページ48

side*大貴









涼介「やっぱ俺も入りたい」




“いいでしょ？”




そんな目で訴える山田を、止める人はいなかった。




♪ 〜




入院してから二ヶ月くらいダンスなんてやっていなかったはずなのに、


今日入れたばかりの振りは完璧で、キレもあって。


さすがだなって。ずけーなって……悔しいけどそう思った。




……だけど


曲の中盤に差しかかった頃




大貴「……！」




すれ違った山田の呼吸が、異常なほどに乱れていた。


気づいてしまった以上、見逃すわけにもいかなくなって。


鏡に映る山田を見ると……




目を見開き、苦しさを忘れるように踊りに集中している。


それはまるで……鏡の中の自分を睨みつけているようだった。




大貴「……」




……焦ってる。


もし俺が途中で止めてしまったら、山田のプライドが許さないと思った。


どうにか曲が終わるまで持ってほしい。そう願うしかなかったんだ。









.









激しいダンスが終わって、セリフの部分。


音源に合わせて、口を開いた山田の膝がカクンと折れて


……そのまま、倒れてしまった。




大貴「山田っ！！！」




俺の目の前で崩れ落ちたその体を、必死で抱きとめる。


ほかの皆も駆け寄り、曲が止まった。




雄也「ちょ、誰か酸素！」




高木のその声で、周りもバタバタとし始める。




大貴「やまだー？聞こえるー？俺のこと見て、ゆっくり呼吸しようか」


涼介「はぁっ……はぁ、はぁっ！」




ぺたんと床に座り込み、目は焦点が合っておらず俺の腕の中でぐったりとする山田。


俺は山田に声をかけ、酸素を取り込もうと上下する背中をさすった。

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