消えない焦燥 ページ46
「…なんで……だって、まだ…」
まだ、胸のざわめきは消えない。
「まだ、何か…」
顔を覆う手は、黒くなっていた。
もう乾いていたそれが、頬を濡らすことはなくて。
変な感触がするだけ。
このざわめきは、ようやく見つけた意味だ。
義務だ。
果たさなければならない、使命だ。
そんなことを誰かに言われたわけじゃない。
でも、わかる。
それだけは、わかったんだ。
「…果たさせて、くれよ、なぁ」
もう終わった。
全部終わった？
「終わってない！終わってない、まだ…っ」
支離滅裂な言葉しか飛び出さない。
でも、本当に終わってない、気がするんだ。
「A、ーーーー」
「うるさい！終わってないんだって！」
落ちたナイフを拾って、走る。
「終わってない、終わってない！終わってないっ！」
落ちていた屍に足が引っかかって、思いっきり前のめりにすっ転ぶ。
起き上がろうとすると、シャオロンさんに押さえつけられてしまった。
…なんで。邪魔、すんだよ。
〈Aくん。落ち着いて、一旦深呼吸しよ？〉
「そんな暇、ないんですよ、はやく、行かないと…」
〈じゃあ、行き先教えてくれへん？〉
「………それ…は……」
…俺だって知らない。
…俺だってわからない。
〈ちょっとくらい寄り道しても変わらへんて。一回帰ってからでも大丈夫やろ〉
「でも、」
〈行きたい場所言ってくれたら、トントン辺りがすぐ送るし〉
何かを為さなきゃいけないと、それだけがわかる。
だから、焦りばっかりが増える。
…俺には、なにができたんだろう。
何をすればいいかすら、もう考えたくない。
何かをするべきなのに、できない。
やれることを取り上げられてしまったら、もう、なにも。
「………」
とん、と頭を小突かれる。
「ーーーー」
短く何かを言って、シャオロンさんは俺を解放した。
シャオロンさんは、インカムで会話をしながら前を歩く。
ついてこいとは一言も言われていないけど、恐る恐るその後ろを歩く。
俺とシャオロンさんの間には、ひとつの会話もなかった。
俺は何も言えずに、ただ下を向いて歩いた。
心地よさなんて、どこにもなかった。
手や服の不快感を、早くなくしてしまいたかった。
思考はずっと、同じところで迷子になっている。
慮る優しさが、今はとても苦しかった。
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Lento(プロフ) - 雑食さん» ありがとうございます！勇者の使命を最後まで見届けていただけると幸いです…。 (2021年4月7日 12時) (
レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
雑食 - すごい泣けてきた。。現実を突きつけてくるみたいで好きです。 (2021年4月7日 1時) (レス) id: 065cb097ab (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - お餅の中のお餅さん» ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年4月5日 9時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
お餅の中のお餅 - 楽しみだ、頑張ってください。 (2021年4月5日 6時) (レス) id: 9d76c4111a (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - うおさん» ありがとうございます！今更新止まってますが続きますので！もう暫くお待ちください！ (2021年3月2日 12時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Lento | 作成日時：2020年3月18日 19時
