伝わればよし ページ26
試しに、単語帳を覗いてみる。
そこには、絶対に覚えられないだろう単語が書き連ねられていた。
我々語の文法ってどんなのだろ。
………………。
「我々語は無理だわ。……あれ？」
単語帳の終盤。そこには、名前が記されている。
……！ これなら、名前だけは書けるっ！
紙を用意して、ペンに青のインクをつける。
これは、大先生への手紙。
誰もいないこの部屋では、案外すらすらと書きたいことが思い浮かんだ。
……読んでくれるかなぁ。
なんて思いながら、紙を折る。
トランプの形を模したその手紙には、ハートの7の絵柄を描いた。
グルッペンさんにはスペードのK。
トントンさんにはスペードのA。
オスマンさんにはクラブの9。
ひとらんさんにはクラブの2。
ロボロ師匠にはハートの4。
コネシマさんにはダイヤのK。
シャオロンさんにはクラブの7。
ゾムさんにはスペードの8。
エーミール先生にはクラブのJ。
ショッピさんにはスペードの6。
チーノさんにはダイヤのJ。
しんぺい神さんにはハートの10。
兄さんにはダイヤの9。
14枚揃うと、それはすごく達成感があって、飾ってしまいたいような気もする。
渡せたらいいなぁ、なんてぼんやり考えながら、胸ポケットに仕舞う。
その時、扉がドゴォンと大きな音を響かせた。
それは明らかに爆発音で。
慌てて扉から距離をとると、扉は開かれるどころか破壊され、厚い扉はこちらに向かって倒れてくる。
ガァンと耳をつんざく大きな音がして、咄嗟に耳をおおった。
ふわりと香るのは、甘い匂い。
「やっと見つけた…！」
その声に、思わず「は？」と声が漏れる。
さらさらなショートカットの金髪に、淡い空色の瞳。
「……変装って香水変えないんすね。……こっちが本当の姿…？」
その匂いは、声は、俺の地雷を踏み抜いた挙句、あの人たちに怪しまれていた人物のもの。
「そんなのはどうだっていいでしょう。あなたの利用価値が跳ね上がったの。よかったわね、消されなくて済んで」
嫌味のように低い声で言って、女性とは思えないほど強い力で俺の腕を引いて走る。
ズキズキと痛みを主張し始めた足を、止められなくて。
ほんの数分で、俺は遠くまで連れ出されてしまった。
(…待って？これって、攫われてる？)
ここの人達と同じ制服。でも、明らかにこの軍の人ではない彼女。
とりあえず、と呑気な頭で、空いた右手をインカムに伸ばした。
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Lento(プロフ) - 雑食さん» ありがとうございます！勇者の使命を最後まで見届けていただけると幸いです…。 (2021年4月7日 12時) (
レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
雑食 - すごい泣けてきた。。現実を突きつけてくるみたいで好きです。 (2021年4月7日 1時) (レス) id: 065cb097ab (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - お餅の中のお餅さん» ありがとうございます！頑張ります！！ (2021年4月5日 9時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
お餅の中のお餅 - 楽しみだ、頑張ってください。 (2021年4月5日 6時) (レス) id: 9d76c4111a (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - うおさん» ありがとうございます！今更新止まってますが続きますので！もう暫くお待ちください！ (2021年3月2日 12時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：Lento | 作成日時：2020年3月18日 19時
