知らんぷりしても不安は不安 ページ37
「俺、さっきまで走ってて……?」
どうしてか、体はどこも苦しくないし、痛くない。
ベッドに寝てるし…んん?
体を起こすと、しんぺい神さんと目が合う。
(???)
頭の中はとうとう疑問符で埋められてしまった。
「楽な姿勢でええよ。今は体大丈夫?」
大先生はベッド脇の丸椅子に座り、遠慮がちに俺の右手を握る。
「あ、え、はい。なんとも……体は強いんで」
そう答えると、大先生はほっと息をついた。
お言葉に甘えて壁に背をあずける。
ほかの三人は居ないのかと思ったら、床に正座をしているのが見えた。
(え?なんで?)
「えっと、すみません、訓練の途中だったのに…」
「ーーーーーーーーーー?」
コネシマさんが何かを言うと、大先生は吹き出して笑った。
「ーーー、ーーーーーーー!」
「…ーーーーーーー」
シャオロンさんとショッピさんも、笑いをこらえながら「お前それやばいだろ!」とか「…俺は知りませんよ」みたいな反応を示す。
「ーーーーーーーーーーーーー〜?」
しんぺい神さんは口角だけで笑いながら、グリグリとコネシマさんのこめかみを押した。
コネシマさんの笑い声を含んだ悲鳴が部屋に響く。
満足したしんぺい神さんは、大先生に何かを言うと、笑いがおさまり始めた大先生がそれを訳してくれた。
「情報交換したいらしいわ。ほら、僕ら全然Aくんのこと知らんなって。再発防止も大切やん?」
「なるほど…?それはいいんですけど、誰か…いてもらわないと……」
記憶が飛んだあたりから脳がとろけ始めていた俺は、とにかく現状をのみ込もうとそう返す。
「日本語できるメンバーは呼ぶから安心しや」
大先生は「大丈夫、大丈夫」と言い聞かせるように俺をなだめた。
(…っあれ、…こわい、って…なんで…)
その時、安心しているのに気づいてから、不安だったことに気づく。
…参ってる場合じゃ、ないのに。
目頭が熱くなって、ツンと鼻の奥が痛む。
(泣くな、泣くな……強い子なんだから……っ)
そう言い聞かせても、どれだけ我慢しても、溢れだした涙は止まってくれない。
ゴシゴシと涙を拭えば、その手はやんわりと大先生に止められる。
「綺麗な顔が傷ついてまうよ。…怖い思いさせてごめんなぁ」
そう言って、大先生は俺の涙を拭う。
(ちがう、ちがう…っ!俺は、誰にもっ謝らせたくなんてないのに…ッ!)
そのひとつも言葉に出せず、俺はただ静かに、首を横に振った。
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Lento(プロフ) - 南無南無さん» ひぇ…!ありがとうございます……!まだまだ続きますので、お楽しみ下さい♪(カメ) (2020年3月5日 12時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
南無南無(プロフ) - めっちゃおもろいやんけぇ…!もっと早くに知っていたら…くそう!無念!! (2020年2月25日 22時) (レス) id: e2dd911ff4 (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - 琴律さん» 全然大丈夫ですよw!めちゃめちゃ応援ありがとうございます!続きもよろしくお願いします♪(カメ) (2020年2月10日 19時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
琴律(プロフ) - すみません!!ほんまにすみません!!間違って低評価してしまいました!!!ほんまにすみません!!そんなこと一ミリも思っておりません!!応援してます!!もうめっちゃおu(( (2020年2月10日 18時) (レス) id: b4e402c9aa (このIDを非表示/違反報告)
Lento(プロフ) - 抹茶さん» コメント、応援ありがとうございます!続きもお楽しみください(≧∇≦)♪(カメ) (2020年2月10日 18時) (レス) id: 109e7882d5 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:Lento & こい x他1人 | 作成日時:2019年11月4日 21時