アイデンティティ4 (ページ38)

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１８６話ページ38

「ギャラクシーノーツ号は重力制御されていますからね」

「なんか、物足りない気もするね…」

「なんだいなんだい！私の料理に不満でもあるのかい？」

「そ、そんな事ないです…！」

森村さんはモニタで見える青い母星、地球がだんだん遠ざかっていくのを見て悲しそうにつぶやく

「ほんとに遠い星に行くんだね…」

「18万光年もあるなんてなぁ…」

その心細い気持ちは隣席の九坂も感じるのだろう、いつもは森村さんの弱気を優しくフォローする彼も18万光年という距離に不安感を隠しきれない。

正確には18万8千光年と、数字にうるさい真名部は訂正する。それは光の速さで移動しても18万8千年かかるという、途方もない距離だ。

「気が遠くなりそう…」

「着く頃には俺たち爺さんになってるぞ」

冗談めかしてではあるものの、それはある意味真理を突いていた。この世に光よりも速い物質はない。その光ですら到着には18万年以上かかってしまうのだ。爺さんどころではなく人間なんて塵一つ残らず風化してしまうだろう。

「そんなに時間がかかるなんて…」

「大丈夫、"ワープ"なら」

最初の敵と戦う前に大いに士気が下がってしまう一行だったが、そんな彼らに助け舟が出る。なぜかギャラクシーノーツ号や大会の主旨に異様に詳しいマネージャーの水川さんが「ワープ」という単語を使ったのだ。

「おお！ワープか！」

「すげぇ！」

「知ってるの？」

「全然！」

こういう話はやはり脳筋たちには不可能だ。アースイレブンの頭脳である真名部は恒星間航行をする場合にはワープ理論が欠かせないものであることを説明していた。