アイデンティティ4 (ページ30)

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１７８話ページ30

一同は屋外グラウンドに移動する。その場で新加入の市川のサッカー技術がどの程度のものなのかを確認するためだ。

「では、百聞は一見にしかずお見せ致しましょう、よろしくお願い致します」

鉄角とさくらが見極めに協力する役割。さくらはお手並み拝見とドリブルで市川に向かっていく。市川を前にしてさくらは得意のジャンプ力でボールを足にかけたまま飛び上がる。

自信満々のプレーだったが、市川も笑ってそのプレーについて行く。さくらの幻惑的な動きに騙されず、適切な挙動でボールを奪い取ってしまった！

そのボールを奪い返そうと今度は鉄角が向かって来る。だが市川はヒールでボールを浮かせて鉄角のスライディングタックルを難なくかわす。これら一連の挙動はとてもサッカーの初心者のプレーだとは思えない。

「凄い…！」

「軸足の負荷を考えるとあの体制を維持するのはなかなか難しいものです」

瞬木や真名部ら見学していたメンバーも市川の動きに目を見張る2人がかりの奪取にも余裕の表情であしらうかのようにプレーする市川、しかも彼は動きにくそうな私服でスパイクすら履いていない。ものすごい素質の持ち主と言えそうだ。

「…確かに実力はあるようだ」

2人をかわして放たれた市川のシュートは、豪快にゴールネットを揺さぶる。仮にも過酷な特訓を積み重ね、押しも押されぬアースイレブンのレギュラーポジションを獲得した鉄角とさくらを向こうに回してのこのプレーである

「円堂さんの特訓に耐えたんだね！凄いよ！！」

「…そういうと思いましたよ、ありがとうございますキャプテン」

この13人で戦うことが決まる。キャプテン剣城は覚悟を決めたが、井吹や瞬木はまだこのメンバーで戦うことに不安を抱いていた。絶対に負けられない戦いという緊張感が、日頃は強気な彼らをここまで弱気にさせていた。