第58話 理由 ページ10
「ほお、偉いのお！ ……そうじゃ、一つ聞いてええか？」
「うん？」
「おんしゃらの本丸のわしは、笑っとるか？」
どこか寂しげな顔と声で、彼は言った。
俺は何故か唾を飲み込む。
シンと静まり返った部屋に、ピリッとした空気が流れ込んだ。
「いや、真剣に答えんくてええんじゃ。ただ、わしじゃったらきっと、耐えられんからのう。
初期刀じゃから、っちゅうんもあるんやろうが、想像しただけで……」
「……ん、元気さ。いつも皆を笑わせてくれる」
やはり初期刀はずっと審神者といたため、寂しいのだろう。
俺は無意識に、陸奥守と加州を重ねた。
「妨害してすまんかったな」
「いんや、気になる気持ちは分かる。それじゃ、お勉強といこうか」
「何から話しましょう。実を言うと、私もそこまで詳しくは無いのでご了承ください」
「ん、わかった。そうだなあ、知りたい事なんて考えずに来ちまったからなあ……」
腕を組み、ううんと頭を捻る。
小難しい話をしても、眠くなるだけだ。
頭がパンクする勢いで考え込んでいると、鶯丸が呟いた。
「審神者は、何故アンインストールするんだ」
「え……」
鶯丸の顔は真剣そのもの。
確かに、俺も知りたかった。
紅葉以外の審神者の、アンインストールの理由を。
何故、俺達を捨てるのかを。
「……そう、ですね。私は家の事情ですが……。私の友人は、結婚をきっかけに辞めた、と言っていました」
「結婚！？」
思わず机を叩いてしまう。
そんな俺を、まん丸の目で紅葉は見ていた。
「え、ええ。本丸は男性ばかりですし……。彼女は刀剣男士達に辞める事を伝えなかったらしいです」
「何故」
「私も彼女に問いました。彼女は言いました。愛しているから、と。彼らと別れるのが辛くて、言ったら辞められなくなってしまいそうだから、と」
そして、彼女はそのまま本丸を出て行き、結婚したそうだ。
もし主が結婚を理由に審神者を辞めたのだとしたら。
そう考えただけで、やるせない気持ちになった。
俺達は恋仲だったし、尚更。
「最近の世の中って、結婚を催促する親が多いんです。孫が見たい、孤独死は恥ずかしい、とか」
「なんだそれ。人の勝手だろう」
「……ええ、私もそう思います。けれど、結婚を理由に辞める人は、案外少なくないみたいです」
紅葉は悲しそうにポツリと呟いた。
広大な海に落ちた涙のように、小さいものだった。
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百翠(プロフ) - みゆさん» わーすみません！！帰宅したら更新と共に訂正したいと思います。ご指摘、応援ありがとうございますー！ (2018年5月3日 8時) (
レス) id: 20166d2150 (このIDを非表示/違反報告)
みゆ(プロフ) - 薬研の骨喰君の呼び方、骨兄じゃなくてばみ兄だったと思います！間違ってたらすいません！これからも頑張ってください！ (2018年5月2日 20時) (レス) id: 51fcd1558b (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：桃翠 x他1人 | 作成日時：2017年12月8日 0時
