05 ページ5
**
『む、無理です!』
ノートを胸に抱える。
彼は不満そうにえーっと唸って、私の顔を覗き込もうとする。
私は彼に背を向けてそれを阻止した。
『まだ完成してないし…』
「なら完成してからでいいからさ!!
ね?」
私の必死の抵抗も虚しく、彼に肩を掴まれて向かい合わせになる。
彼に見つめられて思わずたじろいだ。
なぜか断ることのできないまっすぐな瞳。
気づけば私は頷いていた。
「マジで?よっしゃー!!」
彼は嬉しそうに笑う。
その度にくしゃっと潰れる目元が無邪気で子供っぽい。
そんなかれは思い出したようにあっとつぶやいた。
「俺もう行かなきゃ」
それから「じゃあね」と去り際に一言。
「明日も来るから!!」
そんな彼に一応頭をさげる。
『…変な人』
つぶやいた声は5時を告げるチャイムにかき消される。
(…ん?待てよ)
明日も来るって言ってたよね?
(…これは1種の脅し?)
明日図書室に行かなかったらバラすぞっていうこと?
それは怖いし、いやなのに。
(…明日も来てくれるんだ)
そう思ってしまう私がいる。
『…今日はもう帰ろ』
荷物を取って図書室を出る。
外は蒸し暑くて汗がじんわりとこみ上げてくるのがわかる。
ほおの汗をぬぐって気がついた。
『私、笑ってる…?』
自然と口角が上がっていた。
慌てて周りに人がいないか確認する。幸い人はいなかった。
ほおを抑えて口角を下げる。
『笑ったのなんて久しぶりだ…』
あの人の笑顔を思い出すと自然と笑顔になる。
それはきっと。
…あのひとが、変だったから。
58人がお気に入り
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
Love*(プロフ) - 葵李さん» ありがとうございます!最近あまり更新できていないので、これからドンドン更新できるように頑張ります。 (2018年8月9日 9時) (レス) id: 974225f52b (このIDを非表示/違反報告)
葵李(プロフ) - 更新の通知来てるのみて秒で見に来ました!ほんとにこの作品好きなので応援してます(*^▽^*) (2018年8月9日 0時) (レス) id: aa8b04223b (このIDを非表示/違反報告)
Love*(プロフ) - 白夜さん» 待っていたなんていってくださるなんて…!!驚きです。頑張るので読んでやってください。 (2018年7月21日 15時) (レス) id: 974225f52b (このIDを非表示/違反報告)
白夜 - コメント失礼します。学パロ第2回目待ってました! (2018年7月21日 8時) (レス) id: e0e2c6a007 (このIDを非表示/違反報告)
Love*(プロフ) - ヤギさん» またまた学パロ、悲しい系ですが頑張りますね!私も学ラン着た芝健さんが大好物です。 (2018年7月18日 17時) (レス) id: 974225f52b (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:Love* | 作成日時:2018年7月17日 21時