スラ厶街より (ページ30)

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義賊と社会運動ページ30

どうする？と。

ClはLuの自主性を重んじ選択肢を委ねているのか、どちらでも構わないと思うほどLuに興味がないのか。

気に入らないなとLuは思う。

(何故私の心はクロロのあらゆる言動に波風を立たせてしまうのだろうな)

Lu個人の情動はともかく。

確かに変り身早く盗賊団に入ろうとした狙いは下心だった。

Luはなるべく魅力的で分かりやすい語り口を意識した。

「どうせ盗みをするなら、ロビン・フッドを目指さないか」

「ロビン・フッド？」

「中世イングランドの伝説上の英雄。悪政と戦った義賊だね」

クロロが説明を加える。

「そう。やり方は簡単だ。金持ちからだけ金品を盗み、流星街以外の貧困街にもばら撒く。不殺を貫けられれば完璧だ」

「冗談じゃねえぞ。折角盗賊やるっつうのに戦うなだと？」
「違う。殺すなと言ってる」

Uの不満そうな眼差しにLuは淡々と対応する。

「殺すな、も妙だけどよぉ。なんで盗んだものわざわざ知らねえ奴らに配らなきゃいけねえんだ？」

F(フィンクス)が尋ねる。
「俺らが命がけで盗んだものなのに？」

「それは勿論、世の中の大多数を味方につけるため」

Luは続ける。

「貧富の格差がなくなるのは社会の混迷期だ。逆に安定した社会では、金は金持ちに集まる。

私達が混迷期・世界大戦を経験したのはもう60年以上前になる。格差が広がった現状に不満を持つ人間は多い」

「俺たちは好きで盗賊やってる。でも形式上、金品を貧困層にばら撒いておけば、権力者は俺達に手を出しにくくなるってことだね」

Srが説明を挟んだ。

「権力者は間違いなく搾取する側だもん。貧困層のヒーローに手を出したら"この支配層めー!"って彼らからしっぺ返し食らうかもだしね」

「そう。政治家なら支持率低下で、企業人ならストライキや不買運動という形で。群衆を味方につけて敵を遠ざける。

これがゆくゆくは盗賊団の仲間を守ることになるだろう」

(そして願わくば、社会運動のきっかけとして機能すれば...。

全人類の"基本的人権の尊重"を成し遂げる中心地として、流星街という場所を作り変えられれば...)

ナチスのホロコーストと同じ。人類全員が共有する巨大なストーリーにできる。

ストーリーのもとにホモ・サピエンスは一致団結し、ダンバー数を軽く越えて共同体をつくることができる。

ごくり、Luの喉が鳴った。