スラ厶街より (ページ25)

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制度と道徳ページ25

「君も入る？

訓練生の中でも君の実力は5本指に入るほどだろ？」

LuはClが矢継ぎ早に繰り出す攻撃を躱しながらLuは眉尻を上げた。

「冗談を言わないでくれ」

「組手、止め!」

先生が声をかけ、2人は動きを止めた。

「「有難うございました」」

形式的なお辞儀を済ませる。

その日の夜、Luは寝具で9人柱の所業について考えていた。

(確かに所有の概念がなければそもそも盗みを悪と思うこともないか)

人の道徳観を簡単に変えることは出来ない。

(ならまずは、社会の仕組みから変えないと)

道徳は時代によって変わるものだ。

例えば現代の人々は「小さいうちから働く子供は可哀相」だと考える。
しかしこの考え方は近代的なものだ。アイジエン大陸にある某国の"フリードリヒ大王"が強い軍人を作るために義務教育という制度を作ったことがきっかけで、6歳から15歳の子供は勉強するという社会の仕組みが当たり前のものになったから。

それ以前は子供は働くのが一般的だった。子供にしかできない仕事もあった。

ベゲロセ連合国の歴史で有名な、煙突掃除の仕事だ。煙突の中の狭い空間で身動きができる小さな子供...4歳くらいから...が発がん性物質の煤の中で命がけの労働をしていたのだ。
(...そうだ。冷静に考えてみれば流星街の子供達が盗みを選ぶのも無理からぬこと)

Luは、明日すぐ長老に会おうと思った。