スラ厶街より (ページ17)

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所有の概念ページ17

マップづくりを手伝ってくれたのは、「監視役」と言ってきたF(フィンクス)と、「新入りが何か真新しいことをやっていると聞いて」暇だから着いてきたらしいSr(シャルナーク)。

Nb(ノブナガ)は、空いた時間になら手伝えるとのこと。

不思議な面子だ。

「マップ、一応もう有るんだけどねー」

Srがガサゴソと取り出したのは、丘陵線やら河川やら縮尺やらが記された本格的な地図だった。

「すごいな。これはどこで？」
「秘密」
「...写しだけもらっていいか」

紙がないので、川底で拾ってきた大きくて平たい石4枚に叩き割って先端を尖らせた石で地図を描く。

「これから、なるべく沢山の人に質問しにいって、この地図をもっと詳しいものにしていきたい」

「はい」

Srが手を上げたため、Luが「どうぞ」と言う。

「質問ってどんなこと聞くの？だって地形はここに書いてあるとおりじゃん。聞くことなくない？」
「その土地を利用している人が誰とか、そこの土壌の性質はどうだとか、何を食べてどんな宗教を持った民族が住んでいるだとか...

読んでいて生活が浮き出てくるような地図が作りたいんだ」
「生活が浮き出てくる...ねぇ」

(正直に言えば、知りたいのはどこの土地を誰が利用しているかってところなんだよな)

スラムが発展していくためには所有権の概念を植え付ける必要がある。

人間が一番真剣になるのは自分が関わることだけだ。

例えば、食糧不足を解決するために今までより効率の良い農業を教えるとする。はじめのうちは道具も無償で渡してやるとする。

それだけでスラム街の人間が盛んに農業をしはじめるかと言えば、そうとも言い切れない。
スラム街ではどこの土地が誰のものという明確な位置づけがないから、丹念に作った農作物がちゃんと自分のものになるかどうか分からない。
分からないのに一生懸命になることは出来ない。