もしあなたが【短編】 (ページ10)

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E#37 ページ10

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「Aこれ」

『あ、ありがとうございます』

「ん」

渡されたコップにはコーヒーが入っていた。

そして外側には小さな付箋が貼られており

“今夜いつもの場所で”

それを握りつぶしてゴミ箱に入れる。

私は机の上にある付箋を手に取り
さきほどの返事を書いてそのまま書類に貼る。

『嶋さん、これ確認お願いします』

「ん」

書類を受け取った嶋さんは私がつけた付箋を外し
握りつぶしてそのままゴミ箱に入れた。

私たちの関係は他の社員にバレてはいけない。

社員だけじゃなくて家族にも...絶対にバレてはいけない。

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いつものお店に入り椅子に座ると
私は左手の薬指にある指輪を外して自分のカバンに入れた。

いつ来るか分からない彼をお酒を片手に待つ。

待つのはもう慣れた。

というより、どれだけ待たされても構わない。
それくらい彼に会いたいし触れられたい

しばらくすると隣に待ちわびていた彼が座ってきた。

「ごめん、待たせた」

『大丈夫です』

「じゃあ行こうか」

『はい』

カウンターにお札を何枚か置いて私の手を掴みお店を出る。

彼の左手を確認すると昼間はつけていた指輪が外されていた。

そのことに安堵し、そのまま夜の繁華街に向かう。

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ホテルの部屋に入るとすぐに口付けをする。

貪るように何度も何度もお互いに唇を重ねていく。

やがてお互いに口を開け舌を絡め合う。

舌が絡む音が部屋全体に響くほど口付けは深く激しい。

混じりあったお互いの唾液が口から漏れる。

それを見た嶋さんは舌でそれを舐め上げる。

舐め上げたながら腰に回された手が
シャツのボタンを外そうとしてきたので慌てて止める。

『......っ......まって』

「.........ん？」

『ここじゃ』

「ん」

さすがに扉の前では

手を引かれベッドに向かうと
そのまま押し倒されてさきほどの続きを行う。

何度も何度も...愛し合った。

でもお互いに甘い言葉や想いを伝える言葉は口に出さなかった。

私達は決して許されない関係だから

でも愛することはやめない。

後戻りできないほどこの関係の虜になっていたから。