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定時の時間になり各々が帰っていく。
私は先輩が帰るまで先に帰る気になれず
やらなくてもいい仕事をやり始める。
気が付くと社内には先輩と私だけになってしまっていた。
私は何も考えないままパソコンに向かっていると
「A」
『は、はい』
「俺帰るけど...大丈夫か？」
『大丈夫ですお疲れ様です』
「ん、お疲れ様」
先輩は私の肩をポンと叩き両手に紙袋を持って歩き出す。
その後ろ姿が見えなくなったのを確認して
自分の鞄からチョコを取り出す。
結局渡せなかった。
勇気がでずに渡せなかったチョコの
包み紙を外して箱を開ける。
値段が高かっただけにチョコの一粒一粒が宝石のように綺麗で
しばらく眺めてしまった。
おもむろにその中から一粒手に取り口に入れる。
『にっが』
「苦いんだ」
『っ！』
突然後ろから声がして振り返ると先輩が真後ろに立っていた。
『先輩...帰ったんじゃ』
「忘れ物して取りに来た」
『そ、そうですか』
「それよりそのチョコって」
『じ、自分のために買ったやつです！』
慌てて私は椅子から立ち上がりチョコを隠すように
先輩と向き合い、後ろでチョコの蓋をかぶせる。
「ふーん......俺のじゃないんだ」
『え』
「Aから貰えると思ってずっと待ってたのになー」
『せ、先輩？』
「義理でもAから欲しかった」
『...すいません』
「あーやっぱり用意してないの？」
『あの......はい』
「じゃあさ」
先輩は俯く私の身体を横にずらして
机の上にあるチョコに手を伸ばす。
「これちょうだい？」
『で、でも...同じメーカーのやつ先輩もらってますよ』
「あーAが熱心に見てたやつ？」
『......そうです』
「でも俺はAのやつが欲しい」
『えっと......じゃあこれ......よければ』
「いいの？やった！」
『一粒食べちゃいましたけど』
先輩は嬉しそうに机からチョコの箱を手に持つ。
「あ、Aも食べる？」
『え？』
「ほら、あーん」
先輩はチョコを一粒手に取り口元に持ってきた。
『そんな！自分で食べられますよ』
「とけるから早く」
『あ、はい』
ドキドキしながら口を開けるとチョコが入ってきた。
白い歯をだしてニコニコ笑う先輩の顔を
見続けることができずにすぐにまた私は下を向いてしまう。
チョコはすごく甘かった。
さっきまで苦く感じたのに...先輩が食べさせてくれたからかな
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作者名：おれんじ | 作成日時：2019年1月1日 18時
