もしあなたが【短編】 (ページ6)

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C#5 ページ6

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会社に出勤すると甘いチョコレートの匂いがした。

理由は今日が２月１４日だから

すでに誰かがチョコレートを開けてしまったのだろう。

甘ったるい匂いに少し顔を顰めながら社員に挨拶する。

そんな顔をしている私も実は鞄にチョコを忍ばせている。

片想いをしてる先輩に渡すために

席に座る前に私の背中を強く誰かが叩いた。

「おはよう！」

『先輩、痛いです』

「A見て！こんなにもらった！」

『............よかったですね』

片思いしてる長野先輩が
綺麗な装飾をした箱や袋をたくさん持っていた。

「やっぱり俺ってモテるんだなー」

『............義理じゃないですか』

「人が喜んでるのにお前は」

『わーすごーい』

「棒読みじゃねぇか」

『あ、これ...』

「なに？有名なやつ？」

『............はい』

見つけてしまった。
私が先輩に渡そうとしてるチョコと同じメーカーの物を

しかも私が買ったやつより一回り大きくて高いやつ

最悪だ...もう絶対に渡せない。

「欲しいならあげようか？」

『え？』

「このチョコ熱心に見つめてるから(笑)」

『いらないです』

「遠慮しなくても...こんなにあるんだから」

『結構です』

「それとも別のやつを『だからいらないです！』

私はついムキになって声を荒らげてしまった。

「ど、どうした？」

『...すいません』

「A？」

私は気まずくなって慌ててその場を立ち去る。

本当に最悪。
なんで素直に渡せなかったんだろう。

義理ですけどってサラッと渡して
それで箱の中に入ってる手紙で想いを伝える予定だったのに

ずっと片想いをしてる先輩に告白をするチャンスだったのに

大量のチョコに嫉妬して自分でそのチャンスを潰してしまった。

その後も先輩と気まずいまま仕事をした。

普段は一緒にお昼ごはんを食べに行くけど
今日は別の部署の人がたくさんの人が訪れて
それどころじゃなかった。
みんな長野先輩にチョコを渡すため

その光景に私はまた嫉妬してしまったが
先輩とお昼に行くのは気まずかったので正直助かった。