もしあなたが【短編】 (ページ48)

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G#0 ページ48

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『え』

「..................」

『..................』

「..................」

『あ、あの...なにか？』

会社の廊下ですれ違った背の高い男性に
突然手を掴まれ立ち止まる。

彼は驚いた表情をしたかと思えばじっと見つめてくる

会社の人じゃない
この人誰だろう

廊下で知らない人と見つめ合う

寝癖でもついてるのかと思い
手で髪を抑えるとつり目の彼は目を細め笑った。

あれ、この笑顔どこかで

「A先輩ですよね？」

『え』

「吉川です」

『...............』

「高校の時、野球部だった吉川尚輝っす」

『あー！尚輝くん！』

「思い出してくれました？」

『うん、思い出した！』

高校生の時私は野球部のマネージャーで
尚輝くんは学年が１つ下の野球部員だった。

才能のある尚輝くんは１年生の頃から
スタメンで活躍していたからよく覚えてる

高校生の頃から凛々しい顔立ちをしていたけど
大人になった今はさらにイケメンに

髪型も坊主からサラサラヘアーになっている

でも笑顔はあの頃と変わってない
目を細め笑う彼は可愛らしいまま

『尚輝くん大人っぽくなってて気付かなかった』

「俺はすぐ分かりましたよ」

『すごいね』

「先輩全然変わってないから」

『......私は高校生の頃から変わらない？』

「変わってないっす」

『そ、そうですか』

尚輝くんの言葉を聞いて少しショック

あの頃とは違って化粧も覚えたし
身なりもそれなり気にかけてる...つもり

なのに高校生の頃から
何も変わってないなんて

それは喜んでいいのかな

「先輩は綺麗なままですね」

『.........え』

「あの頃からずっと」

『...............』

「あ、俺会社に戻らないといけないので」

尚輝くんは呆然としてる私の前に
なにかを差し出してきた。

差し出された物を受け取り確認すると
尚輝くんの名刺だった

会社の電話番号と
尚輝くんの携帯の番号が書かれている

「今日飯行きません？」

『う、うん...いいけど』

「じゃあ終わったら電話ください」

『...わかった』

私が頷くと彼はまたニコッと笑い
立ち去って行った。

彼ってこんなに強引だったけ

というか誘い方がスマートすぎる

高校生の頃とは違う

大人になったんだ