もしあなたが【短編】 (ページ40)

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ご飯を食べ終えた明石さんは箸を置いて
サクラを撫でながら今度は私の方に顔を向けてくれた

「こんなおっさん誰も相手にしてくれないし」

『そんなことないです！明石さんは素敵です！』

「気を使わせちゃってごめん」

『......本当ですよ』

「A」

『明石さんを想ってる人はたくさんいます』

「...............」

明石さんは困った顔をしながら
私を見つめてきた

目の前にいますよなんてことは
もちろん言えなくて
私は無言で立ち上がり
机の上のお皿を片付ける

「あ、俺片付けるよ」

『大丈夫ですよ』

「ごめんね」

『いえ』

食器を洗い棚に戻す

そしてお茶を入れ直し
リビングに戻る

サクラは明石さんの膝の上で
爆睡していた

『...すいません』

「ん？」

『サクラ寝ちゃって』

「いいよ、寝顔可愛いし」

『あ、お茶どうぞ』

「ありがとう」

明石さんはサクラの寝顔を見つめながら
身体を優しく撫でている。

その光景を隣で見つめる

さっきも言ったけど
明石さんの膝の上に乗って
撫でてもらえるなんて

『いいなー』

「ん？」

『え、あ、心の声が』

「心の声？」

『いえ、あの、すいません...忘れてください』

「A」

『はい......えっ』

明石さんはサクラを撫でている反対の手で
私の頭を優しく撫で始めた

目尻に皺を寄せ
私の大好きな笑顔を向けながら

顔が熱くなるくらい
恥ずかしくなって
思わず俯いてしまう

恥ずかし過ぎて
明石さんの顔が見られない

「嫌だった？」

『い、いえ、すごく...嬉しいです』

「よかった」

『ありがとう、ございます』

「A」

『...はい』

「こっち見て」

頭にあった手は移動し
私の顎に手を添え持ち上げてきた

笑顔ではなく真剣な表情で見つめてくる
明石さんを見つめ返す

「......ごめん」

『え』

「俺嘘ついた」

『嘘？』

「Aの家に行きたくてサクラに会いたいって嘘ついた」

『そ、そんな嘘つかなくても』

「ごめん」

『明石さんなら...いつでも入れるのに』

「...俺だけ？」

『はい』

私が頷いたのを確認した明石さんは
私の手を引き距離を自分の元に引き寄せる

肩が触れ合うくらい近い距離で
また恥ずかしくなって下を向きたかったけど
頬に手を添えられ向くことができない

「俺だけしか入れちゃダメだよ」

『...はい』

「A」

顔が近付いてきたので私は目をつむる