もしあなたが【短編】 (ページ38)

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Sh#8 ページ38

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『明石さん、みてください』

「ん？」

『うちの猫です』

「あー可愛い」

『可愛いですよね！』

家で飼ってる猫の写真を
隣でご飯を食べている上司の明石さんに見せる

「A猫飼ってたんだ」

『私の癒しです』

「メス？オス？」

『メスです！』

「凛々しい顔立ちしてるね」

『そうなんです、美人なんです！』

猫を褒めてもらって嬉しい私は
別の写真も見てもらおうとフォルダーを探す

「A」

『はい』

「会いに行ってもいい？」

『............え？』

「その子に会いたい」

『それは...い、家に来るって、ことですか？』

「ダメ？」

『ダメじゃないです、ど、どうぞ』

「ありがとう」

目尻に皺を寄せて笑う明石さんが
かっこよ過ぎて持っていたスマホを落としそうになる

「今日行ってもいい？」

『え、今日ですか』

「急だった？」

『......だ、大丈夫です！』

「よかった」

早く家に帰って掃除しなきゃ
洗濯物も取り込まないと

帰ってやることを考えながら
机の上のお弁当箱を片付ける。

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もうすぐ着くと明石さんからLINEが来て
慌てて鏡の前で身なりを整える

掃除もしたし、洗濯物も取り込んだ
服も髪型も化粧も変じゃないと改めて
部屋を見渡し確認するけど

なに期待してるんだろう

明石さんはこの子に会いに来るのに

私の足元に寝転がりお腹を舐めてるこの子に

その場にしゃがみ頭を撫でてあげると
すぐに玄関のインターフォンが鳴る。

急ぎ足で玄関の扉を開けて
ニコニコしながら立っている明石さんを家に招く

『こんばんは』

「こんばんは...あ、この子？」

『はい』

「可愛いーおいでー」

しゃがんで手を広げる明石さん

あなたの方が可愛いですと言いたかったけど
なんとかその言葉は飲み込んだ。

私の足元にいる猫は警戒して動こうとしない

『すいません...慣れれば寄ってくるんですけど』

「警戒するよなー」

『とりあえずどうぞ、入ってください』

「失礼します」

『コートもらいます』

「ありがとう」

明石さんからコートを受け取ると
香水のいい匂いがして顔が熱くなる

明石さんにバレないようにコートをかけて
お茶の用意をする

「Aらしい部屋」

『そうですか？』

「うん、物がなくてシンプル」

『物があるとサクラが噛んだり引っ掻くんで』

「サクラちゃんって言うんだ」

『桜の木の下で拾ったので』

「拾い猫？」

『はい』