もしあなたが【短編】 (ページ26)

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松田さんに見とれているうちに彼は私の手から袋と
トイレットペーパーを奪い歩き出す。

『え、ちょっとなにしてるんですか？』

「夜遅いんで送りますよ！」

『大丈夫ですから』

「Aさんと話したいんです、ダメですか？」

『い、いえ...じゃあよろしくお願いします』

「はい！」

失恋した相手
気まずかったのでお断りしたかった。
なにより奥さんに申し訳ないし

でも爽やかな笑顔を見てしまったら私はつい頷いてしまった。

お言葉に甘えて松田さんの左側に移動して歩き出す。

「お会いするの久しぶりですね！」

『そうですね』

「最近お荷物ないんですね」

『まぁ』

「会社復帰して...やっと会えると思ったんですけど
月に１回の荷物がなくなってて寂しかったです(笑)」

『すいません定期便辞めちゃったんです』

「そうでしたか」

『今までお世話になったのに何も言わず...すいません』

「いえいえ、休職してたんで仕方ないですよ」

『......もう復帰されてるんですね』

「はい、おかん退院できたんで」

『え』

「ん？」

『お、おかん？』

「はい」

チラッと下を見てトイレットペーパーを掴んでる左手を見ると
松田さんの薬指に指輪はなかった。

『奥さんじゃないんですか？』

「は？奥さん？なんの話しですか」

『だって...お兄さんに聞いたら奥さんが入院したから休職って』

「誰がそんな適当なことを...新人のやつかな」

『入院されたのはお母さまだったんですね』

「うん、俺奥さんいないから(笑)」

『............よかった』

「ん？」

『い、いえ...お母さま退院できてよかったですね！』

「ありがとうございます！」

奥さんがいないことに安堵したがすぐにまた不安になる。
松田さんは奥さんはいないと言ったけど彼女はいるかもしれない
だとしたらこの状況は彼女さんに申し訳ないな

そう思ってたら自宅のマンションについた。

私は頭を下げて松田さんにお礼を言う。

『もうここで、ありがとうございました』

「部屋まで持っていきますよ」

『申し訳ないですよ』

「運ぶのは慣れてますから(笑)」

いや、あなたじゃなくて彼女さんに申し訳ないんだけど
と言い前に松田さんはマンションの玄関に入っていった。

慌てて追いかけてエレベーターの前にいる彼の隣に立つ。

エレベーターの中に乗り込み尋ねた