もしあなたが【短編】 (ページ25)

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ピンポーン

インタホーンが鳴ってモニターを確認すると
松田さんじゃない別の人が荷物を持って立っていた。

え、松田さんじゃない

この半年間ずっと松田さんだった。
別の人が来たことはなかったので驚く

『はい』

「宅配便です。お荷物をお届けにきました」

『ありがとうございます』

「ここにサインお願いします」

『今日は...松田さんじゃないんですね』

「あー今日休みっす」

『そうなんですか』

「じゃあ、ありがとうございました！」

『あ、これ貰ってください』

「あぁ...すいません。失礼します」

『ご苦労さまです』

松田さんに渡すために用意した缶珈琲とお菓子を渡す。

今日は休みか...残念。

お楽しみは来月に取っておこう。

しかし翌月も松田さんは来なかった。

先月とはまた違うお兄さんに松田さんのことを尋ねてしまった

「奥さん？が入院したかなんかでしばらく休職らしいっす」

『あ、そうなんですか』

頭を鈍器で殴られた感覚がした。
奥さんが入院...あんな素敵な人に奥さんが居ない方がおかしい。

なんで今まで気づかなかったんだろう。

荷物をリビングに降ろしてスマホを手に取る。
ネットに繋いで定期指定予約を取り消す。

これでもう来月から来なくなる。

私の恋もこれで終わり。

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数ヶ月後

日用品が届かなくなったので薬局で買い出しをする。
定期便って楽だったなって最近よく思う。

めんどくさがり屋の性格なので買い出しに行くのは億劫だし
トイレットペーパーや買い物袋を持って帰るのも大変。

また頼もうかな...でもな...って考えながら片手に袋を持ち
もう片方の手でトイレットペーパーを持ちお店を出て歩き出す。

すると直ぐに後ろから男の人の声で呼び止められる。

「あの」

『..................』

「すいません！」

『..................』

ナンパなんて久しぶりだなーキャッチセールスかなって
思いながら無視してそのまま歩き続ける。

「Aさん！」

『え？』

「やっぱりAさんだー！」

名前を呼ばれて振り返ると大好きな笑顔がそこにあった。

『ま、松田さん』

「お久しぶりです！」

『お久しぶりで...す』

「お買い物ですか？」

『あ、はい』

いつもは青いポロシャツの制服を着ている松田さんが
今は私服姿で立っている。めちゃくちゃかっこいい