もしあなたが【短編】 (ページ16)

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「Aのことな、最初は変なやつって思ってた」

『え？』

「他の同期は俺に嫉妬むき出しで突っかかってくるし
なにかにつけて俺と競おうとするのにAは...」

「Aは誰とも群れずに１人でふわふわしとって(笑)」

『ふ、ふわふわって』

「変なやつって思い始めた時には目で追ってた」

『.....................』

確かに私は同期の中で１番地味だった。

目立つのが嫌いだし西川くんみたいなすごい人と
勝負なんてしてもはじめから結果は見えてるから
そんなこと絶対にしなかった。

逆にそれが彼にとって珍しく感じたようだった。

「目で追い始めてからAのすごい所たくさん見つけてん」

『す、すごい所？』

「朝早く出勤して社内掃除して花に水入れてることや
あくびしてる社員の机にコーヒーやガムを
さり気なく机に置いていくこと」

『は？』

「社員が会社に子供連れて来た時はお菓子や折り紙作って
子供に渡してあげてることとか(笑)」

『.................あのそれは？』

「コピー機の用紙やインクがなくなる前に補充したり
救急箱の絆創膏を実費で補充してることとか」

笑いながらいくつか私のすごい所？を挙げてくれるが
正直なにがすごいのか分からない。

特別なことは何もしてない、当たり前のようにいつもやってること

売上１位を取る西川くんに比べると天と地の差がある。

『それは...すごいのかな？』

「え、充分すごいやん！」

『でも』

「Aにとっては当たり前のことをやってるかもしれないけど
俺からしたらこんなに気配りできるやつ初めて」

『え』

「Aは周りをよく見て行動してる...すごいわ」

『そんなこと』

「A、いつもありがとうな」

『...............西川くん』