もしあなたが【短編】 (ページ1)

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F#7 ページ1

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帰社すると社内は静寂に包まれていた。

物音一つしない社内に私は足を進め自分の席に座る。

時計を確認すると１１時だった。

大きなミスをしてしまい取引先に直接謝罪しに行ったら
こんな時間になってしまっていた。

いつまでたっても成長できない、要領の悪い自分に嫌気がさす。

もう新人じゃないのに...なにしてるんだろう。

自分の席に座りながら遠くを見つめていると
突然頬に暖かい物があたり驚く。

「お疲れ」

『......どうして』

「ん？落ち込んでるAを励まそうと思って」

そう言って西川くんは笑いながら私にコーヒーを渡してきた。

『別に...落ち込んでないけど』

「嘘つけ、顔に出とる」

『でてない』

「でとる」

『でてないって...もう放っておいてよ』

西川くんの優しさを素直に受けとめることができない。

同期入社した彼は私なんかより仕事がよくでき実績を残してる
上司や先輩に可愛がれ後輩にも慕われてる。

社内の人気者

それに比べて私は何年経ってもミスばかり
上司にも呆れられ後輩にも下に見られてる。

だから私は...彼が嫌いだ。

彼と一緒にいると自分がどれだけ出来が悪いのか
思い知らされるから...だから極力近付かないようにしてる

それなのに何かにつけてこの男は私に構ってくる。

ミスをしたら誰よりも早くフォローしてくれて

私が上司に怒られていると庇うように上司を宥めてくれる

一人で昼食を食べているといつも隣に座っくるし

帰りも一緒に帰ろうとしてくる

今もこうやって夜遅くまで会社に残り私を待っていてくれる。

なんでこんなことしてくるのか私には分からない。

もう放っておいて欲しい。

あなたが構えば構うほど自分が惨めになってくる。

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私は差し出されたコーヒーを受け取らずに無視して
デスクに向き合い残った仕事を再開する。

すると彼はコーヒーを私の机に置き隣に座ってきた。
そして私の机に置いてある資料に手を伸ばす。

『ちょっと！』

「手伝うわ」

『いいって...もう帰りなよ』

「一緒にやれば日付が変わる前に終わるやろ」

『だからいいって、１人でやるから』

西川くんは私の言葉を無視して仕事を進める。

その姿を見て私も再開した。