G#19 ページ45
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「そろそろ行こう」
『ごめん、あと少し』
智之と結婚して１年。
結婚記念日だからいつもより高めのお店を予約してくれた。
だから私はカジュアルドレスを着て準備をしている。
ただその準備が思いのほか時間がかかってしまい
痺れを切らした智之が声を掛けてきた。
私はその声に慌てて口紅をつける。
普段は使わない、特別な日にしか使わない口紅
その口紅を唇につけて鞄に入れる。
『お待たせしました』
「ん」
『さ、行こう！』
「A」
智之は名前を呼びながら私に口付けをしてきた。
深くはないが啄むような口付けを私は受け入れる。
でも時間が迫ってるので彼の胸を軽く押して唇を離す。
彼の唇に口紅が付いてしまっていたので鞄からハンカチをだして
彼の唇をハンカチで拭いてあげる。
彼は何も言わず受け入れるが私の唇をじっと見てきた。
「その色はじめてみた」
『.........そうかな』
「普段してないよね」
『うん』
「誰かにもらったの？」
『うん』
「ふーん、似合わない」
『............』
私からハンカチを奪い私の口を荒々しく拭いてきた。
それにムカついた私は彼の手を掴み睨みつける。
『智之』
「なに」
『この口紅、智之がプレゼントしてくれたものなんだけど』
「.........そうだっけ」
『...............』
「...............」
２人の間に険悪な空気が漂う。
智之は眉を下げ申し訳なさそうな顔をしてる。
「A」
『ちょっと待ってて』
「ん」
私は化粧台に戻りいつもの口紅を取り出して唇につける。
ポーチから口紅を取りだし今つけた口紅を変わりに入れた。
その姿を見た智之は気まずそうに声をかけてきたが
私はそれを無視して玄関に向かう。
「あのさ」
『予約の時間迫ってるから早く行こう』
「うん」
お互いにお酒を飲むのでタクシーでお店に向かう。
タクシーに乗ってる間もお互い無言。
気まずい空気が流れる。
でも怒りが収まっていない私はそんなことに一切気にせず
タクシーの窓から夜の街を眺めた。
お店に着いて席に案内される。
案内され席は夜景の見える個室だった。
綺麗な夜景を前に私達は何も言わず食事を待つ。
痺れを切らした智之がまた私に声を掛けてきたが
私はそんな智之を見ずに夜景を見つめたまま。
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作者名：おれんじ | 作成日時：2018年12月12日 23時
