D#51 ページ44
.
「Aー！」
『んー？』
「果帆がミルク飲まない」
リビングに目を向けると
陽太はソファに座り娘の口元に哺乳瓶を向けている。
さっきまで今日は俺が飲ませる！って意気込んでいたのに
今は焦ってそわそわ、あたふたしてる。
こんな陽太を見るのはすごく珍しい。
常にポーカーフェイスで試合中も冷静なのに
それが面白くて私は少し笑いながらキッチンを出る。
娘は哺乳瓶の先を口に入れず手でイヤイヤと抵抗してる。
『いつもは勢いよく飲むのになー』
「すげぇ嫌がるんだけど」
『うーん...なんでだろう』
「まさか病気？」
『まさかー少し時間をあければ大丈夫だよ』
「ちょっと俺調べるからA変わって」
『え』
陽太は哺乳瓶を机に置いて娘を私に託しスマホで調べ始める。
娘のことになると急に心配性になるらしい。
その姿に呆れながら娘を抱え試しに哺乳瓶を口元に向けると
果帆はすぐに口に入れて勢いよく飲み始めた。
『飲んだ』
「え、飲んだ？」
『うん』
「..................」
『病気じゃなくてよかったね』
「..................」
『陽太？』
「俺じゃ飲まないんだな」
『たまたま飲みたくなかっただけだよ』
「はぁー」
陽太は大きなため息をついて果帆の頬を指でぷにぷに触る。
１月の今、野球選手はオフシーズン。
ゆっくりしてる陽太も
２月になれば春季キャンプが始まり
キャンプが終わればすぐにオープン戦が始まる。
そしそのままシーズンに入る。
家族とゆっくり過ごす時間は限られている。
だから今のうちに少しでも長く娘と一緒に過ごしたくて
自分でお世話をしてあげたいんだと思う。
寂しそうな顔をしてる陽太に声をかける。
『焦らなくていいんだよ』
「...うん」
『次はきっと飲んでくれるよ』
「...うん」
『夕方のミルクも任せていい？』
「うん、やる」
『ありがとう』
「ゲップ、俺がやる」
『はい』
ミルクを飲み終えた娘の手から哺乳瓶を離して陽太に託す。
陽太は娘を抱え背中をポンポンと軽く叩き始める。
チラッとその様子を見ると彼はすごく嬉しそうな顔していた。
その事に安堵して哺乳瓶を片付ける為に立ち上がり
キッチンに向かうがまたすぐに陽太が私を呼ぶ。
「Aー！」
『んー？』
「果帆が吐いた」
『..................』
お父さん、頑張れ
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 276人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「プロ野球」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：おれんじ | 作成日時：2018年12月12日 23時
