続き ページ16
「…それでも。」
「…形だけだとしても、私…今、すごく幸せ。」
「……ええ、オレちゃんもですよ。…形だけでも、ね。」
(…嗚呼、ひどいよ。神様も、マリア様も…だって、私…彼のことがこんなにも大好きなのに…。)
私は動かないマリア像を見つめて、心の中でそう訴えた。
天使である自分にとって、何よりも尊い存在である彼らに、私は生まれて初めて憎悪を抱いた。
すると、物思いにふける私を見てブラックがそっと手をとり、
ちゅ、と手の甲にキスをした。
「さぁ、はじめちゃいましょう。いつ神にバレるかわかりませんから。」
「うん。」
彼の取り出した小さな箱から、指輪が2つ現れる。
1つは少し小さくて、悪魔の翼のついた銀の指輪。
そして、その翼の間にはまるで天使を象徴するかのような純白のダイヤモンドが美しく輝いている。
もう一方は、天使の翼のついた金の指輪。
これにも、悪魔を象徴するような漆黒のブラックダイヤモンドが妖しく輝いている。
お互いの形に、お互いの色。
スッ…と私の左手の薬指にはめられた指輪はぴったりの大きさだった。
「こういうの、人間の言葉でオレちゃんの給料3ヶ月分…、って言うんですよね?永遠に外さないで下さいよ…?」
「ふふ、給料ねぇ?」
youtuberという再生数に収入を左右される仕事に就いているブラックがわざわざ言うのは、たぶん彼なりのジョークなのだろう。
今まで自由気ままに、自分の好きなことを気まぐれにやってきたような悪魔が、私と言うたった一人の天使のためにこんな素敵な指輪を用意してくれた。
その事実が、嬉しくて嬉しくてたまらない。
「…あ、待って…」
「?」
「ブラックは、結婚式の服着ないの…?」
いよいよ誓いのキス(と言っても結ばれるわけがないのだけれど。)をしようとした時、私は今更彼が普段着なのに気づいた。
せっかくならブラックも、なんて思ってたのに。
「着ませんよ、オレちゃん窮屈なのは苦手なので…。それに…」
「それに?」
「オレちゃん、新郎よりも花嫁をさらっていく悪魔の方が性に合ってるので…♪」
「…っ。」
不敵な笑みを浮かべると、彼は今度こそ、目を見開いて驚いた私に奪うようなキスをした。
真夜中の教会で行われたこの禁忌を知るものは誰もいない。
そう、神でさえも。
知っているのは、悪魔と天使と、二人を不気味に照らしていたあの満月だけなのだから。
END
◆Valentines’ Day (from Black.ver)→←◆禁断の誓い(しみじみ・切ない・暗め…?)
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イエイ - ぎゃああああああああああああ!!??いい作品すぎるー!?続きが待ちきれないぜ☆←落ち着け (9月12日 21時) (レス) @page43 id: 3b9832ac3e (このIDを非表示/違反報告)
おむすび - 個人的に余裕全開の先輩ブラックがうぶな後輩夢魔主を抱く(?)話しが好きです。(いいぞブラックもっとやれ) (2023年4月2日 7時) (レス) id: ef589f12bf (このIDを非表示/違反報告)
いなり(プロフ) - かりりんさん» コメントありがとうございます♪ぜひぜひ、気長にお待ちください (2022年6月20日 13時) (レス) id: 44292e34f7 (このIDを非表示/違反報告)
かりりん - 続き楽しみです❗️ (2022年6月17日 18時) (レス) id: 2cbb035564 (このIDを非表示/違反報告)
かりりん - こうゆう作品探してました。 (2022年6月16日 22時) (レス) @page38 id: 2cbb035564 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:いなり | 作者ホームページ:Twitter → @inary_2055
作成日時:2020年12月25日 22時