34話 切支丹 ページ36
胸ぐらを掴んだと言っても、力は男のほうが強い。払おうと思えば払えるのだろう。
けれど天草四郎はそれをせず、ただ私を見ていた。
ーーー私は。それが嫌だ。
暫くして、天草四郎は口を開いた。
「怨んでませんよ、怨むわけがないでしょう。」
「戯言を・・・！」
「俺はあなたを怨んではいない。」
はっきりとした口調で天草四郎は否定する。真っ直ぐな目で否定する。
「私をあなたが怨むのは分かります。けれど私にはあなたを怨む理由がない。」
そんなことを平然と口にする。天草四郎はすらすらと戸惑いもせず口にする。
「お前に。お前に従った奴らは、皆私を怨んでいた。」
「・・・そうでしたね。」
「お前が私を怨まないのは。おかしい。」
そんな言葉しか口に出なかった。うまく言い表せないのだ。私はずっと怨まれて当然だと思って生きてきた。だからやつも私を怨んでいると思った。
なぜなら私は味方をしなかったからだ。彼らが死ぬであろうこともわかっていたくせに警告すらしなかった。
私を殺したかった奴らなら何千といるだろう。私を怨んでいないもののほうが少ないかもしれないのだ。
「Aと。」
そこで天草四郎は私の名前を呼んだ。私が同年代に名前を呼ばれるなんていつ以来だろうか。
そんなことが頭に浮かんだ。
「あなたと、あなたの父上は関係ない。」
それは正論だ。
正しい、正しいだけの言葉だ。正しさでは人は救えない、正しくても私は救えない。
例えこいつに関係なくても、私には関係がある。私の七割は父上によって構成されているのだから。
「・・・煩い。」
私の人生に父上は関係ないと割り切れたなら、どれほど楽だったか。
「言われなくてもわかっている。」
私は奴の胸あたりから手を話し、走り去ろうとする。
右足を踏み出して後ろに回ろうとしたところで天草四郎に手首を掴まれた。
「何っ」
「部屋はこっちですよ？」
そう言ってやつは私を先程まで進んでいた方向へと引き寄せる。逃さないと言わんばかりに
「別に部屋に行くつもりは・・・」
「マスターから部屋に案内するように言われているのですが。」
マスターから、という一言に私は抵抗しようとしていた足を止める。彼女には申し訳ないことをしたという罪悪感があるからだ。何より私は彼女の近くで二度も宝具を撃とうとしている
「嫌がられるかと思ったのですが・・・」
「嫌に決まっているだろうが馬鹿者。」
そう言って私は天草四郎を睨んだ
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コッペリア - renaさん» ありがとうございます。一気よみ、割と時間がかかるのに読んでくださって本当にありがたいです。続編でもよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (
レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
コッペリア - Mさん» なかなか更新できなくて申し訳ありません…そろそろ続編ですのでそちらの方もよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
コッペリア - あっぷるさん» ありがとうございます。続編が完結して余ったページで作る予定なのでちょっと時間がかかりますがよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - とても面白くて一気に読ませていただきました！更新楽しみに待ってます！ (2018年3月24日 23時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 天草と夢主ちゃんがとても好きです^^*続き楽しみにしています。更新頑張ってください！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: bf7dfd3d5f (このIDを非表示/違反報告)
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