33話 生は罪である ページ35
白、白、白、白。見渡す限り白いカルデアの廊下を私と天草四郎は歩く。外は相変わらず吹雪で何も見えない。少し慣れれば雪というものが恐ろしく感じてくる。
一面の白に押しつぶされる恐怖。
「んっ・・・」
ピクリ、と指先が痙攣した。まだ痛みが少しだけ残っている。レオナルド曰く霊基は完璧に修復されていない、らしい。二度の洗礼詠唱とやらによってダメージが蓄積した私の体は完全に治るまで時間がかかるとのことだった。
最短で今日の朝から昼頃とレオナルドはいっていた。
「大丈夫ですか？」
わりと小さな声だったのだが、天草四郎には聞こえていたらしい。奴が話しかけてきた。
「お前に心配されるほど弱くはない。それより何故私と一緒にいる？殺されるとは考えなかったのか？」
私は彼に問う。工房を出るときから奴は私と一緒だ。
「部屋がこっちなんです。」
ニコリと微笑んで天草四郎は言う。息をするように嘘を吐く男なので信頼はできない。
「・・・詐欺師にでもなったらどうだ。」
「おや、拒まないんですか？」
「お前は拒んでも来るだろう。」
「そういえばそういうこともありましたね。」
数歩先を歩いていたはずの私はいつの間にか天草四郎の隣にいた。あいつは変わらぬ笑顔で笑っている。
それが、酷く不快だ
「天草四郎時貞。」
私が歩みを止めると、少し遅れてやつも歩みを止めた。
「はい、何でしょう。」
「私はお前が嫌いだ。」
銀色の髪、焼けた肌。それは私の知る天草四郎ではない。が、笑顔も口調も声も性格も変わってはいない。
死んでも、こいつの性根は変わってないのだろうか。
「ええ、知ってます。」
激昂するでもなく不快さを示すでのもなく。当然とも言いたげな顔で平然と受け入れる。
こいつはそういうやつだった。
「ならなぜ私を救おうとする？なぜそんな、くだらない嘘が吐ける。」
私が睨むと、天草四郎は年相応の少年のような苦笑を浮かべながら言う。
「嘘じゃないんですけどね・・・」
「お前はっ！」
気がつけば、私はやつの胸ぐらをつかんでいた。
「私の命と私の居場所と人生を引き換えに農民を救おうとしたんだろう！？私を殺してまで！ならなぜ私を救うなどという戯言が吐ける！切支丹の得意な哀れみか！？同情か！？お前が救うべきなのは私ではないだろう！私だけは救うと言うな！」
こいつと私は敵だった。
「私を怨んでもいないと聖人ぶるのも大概にしろ！」
だから私は、恨まれているはずなのだ。
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コッペリア - renaさん» ありがとうございます。一気よみ、割と時間がかかるのに読んでくださって本当にありがたいです。続編でもよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (
レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
コッペリア - Mさん» なかなか更新できなくて申し訳ありません…そろそろ続編ですのでそちらの方もよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
コッペリア - あっぷるさん» ありがとうございます。続編が完結して余ったページで作る予定なのでちょっと時間がかかりますがよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - とても面白くて一気に読ませていただきました！更新楽しみに待ってます！ (2018年3月24日 23時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 天草と夢主ちゃんがとても好きです^^*続き楽しみにしています。更新頑張ってください！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: bf7dfd3d5f (このIDを非表示/違反報告)
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