16話 白骨の問答 ページ19
「お久しぶりです。」
たいして顔を曇らせるでもなく、怯えるでもなく。当たり前のように当然のように微笑を浮かべながらこちらを奴は見据える。
ーーーああ、思い出した。私はずっとその笑顔が嫌いだったのだ。
何度その笑顔を見てきただろう。何度その光景を見てきただろう。
知らず知らずのうちに唇を噛む。体は動けるようになったはずなのに、うまく動くことができない。
こいつは、こいつはまた。またその薄っぺらい嘘を貼り付けてるのかと思うと、彼が私を馬鹿にしているような気がした。
何を口にすればいいのか分からなかった。愚かだと笑うべきなのだろう。憎いと叫ぶべきなのだろう。
けれどかける言葉が喉から出てこない。口の中が酷く乾いて、喉の奥が痛みだすような錯覚に陥る。
「ちょっと、大丈夫なの？」
女が私に言ったことに気づくまで五秒ほどかかった。
大丈夫・・・私が？何の変化も不調もない。ただ目の前にいる仇を討てないそれだけが悔しくて。
こいつが憎い、こいつが恨めしい。こいつのせいで死んだ、こいつに殺された。
私は、ただこいつを殺せたらいい。それだけなのに。
仮初の主である少女すらこれを守ろうとする。生前も同じようなことがあった。
幽鬼のような顔をした男が、女が、子供が、老婆が、老人が。
これを守ろうとする。自らの命を捨ててこれを守ることが本望だと言いたげに。
なぜ、どうして。ただ祭り上げられたに過ぎない人間を守ろうとした。
なぜこの男と共に戦うことを良しとしたのだ。そのせいで何人が殺されたと思っている、何人が死んだと思っている。
こいつさへいなければ。死者はそこまででなかったのに。
「お前は。」
咆哮を上げて追ってくる人々の群れが居た。兵を殺して喜ぶ女がいた。
貪欲に生きようと足掻いた人々がいた。
「何もなかったかのように・・・！」
父上を貶めたくせに。母上を危険に晒し一人娘であった私さへも殺した。
神の子など嘘だ。ただの人であり、邪魔なものを切り捨てるだけの。
どうしてこいつは。
恨み言をいくら並べても。通じないような気がした。言葉という言葉をかけたとしても心に響くことはないのではないかと思った。
ここまで非人間的な男だっただろうか。感情を押し殺せるような人間だっただろうか。
それとも忘れたか。
お前が私を殺したのに。
どうして殺した女の前で笑っていられるんだ。
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コッペリア - renaさん» ありがとうございます。一気よみ、割と時間がかかるのに読んでくださって本当にありがたいです。続編でもよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (
レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
コッペリア - Mさん» なかなか更新できなくて申し訳ありません…そろそろ続編ですのでそちらの方もよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
コッペリア - あっぷるさん» ありがとうございます。続編が完結して余ったページで作る予定なのでちょっと時間がかかりますがよろしくお願いします。 (2018年3月25日 12時) (レス) id: afa478f1da (このIDを非表示/違反報告)
rena(プロフ) - とても面白くて一気に読ませていただきました！更新楽しみに待ってます！ (2018年3月24日 23時) (レス) id: 8104f6caff (このIDを非表示/違反報告)
M(プロフ) - 天草と夢主ちゃんがとても好きです^^*続き楽しみにしています。更新頑張ってください！ (2018年3月18日 21時) (レス) id: bf7dfd3d5f (このIDを非表示/違反報告)
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