恋を知るちぐはぐ 【ヒソカ】

Six 2週間後に向けて ページ7

「いいか？ これだけは絶対に守るんだ。
諦めたり、マイナスな言葉は言うな。
食べ物は汚物と考えろ。
痩せる自分をイメージしろ」



丁寧に紙に書かれたその三ヶ条をノートに必死に書き写す。

さっき、素敵な服と、靴と…何ならアクセサリーも買ってまた山奥のゾル家へ戻ってきた。



「Aのぶよぶよの原因は、食い過ぎだ！
ちょっとは動いてるみたいだけど、運動量よりも食べる量の方が多いんだよ
だったら、食べる量を減らすか運動量を増やせば体重は少しずつ減っていく」

『前者でお願いしま、』

「しかぁーし！」



ノートを書き終えた私は、私の前に立ちはだかるキルアに相槌を打つ。

…かぶり気味に言葉を遮られた。



「それじゃ、いつまで経っても劇的ビフォーアフターはしない！
遊園地に行くなら、華奢なワンピースを着るなら！
……どっちもしないといけないんだ」

『え、まじ』


12歳の子供にダイエットの極意を教えて貰っている18歳。

滑稽な図、です。


力説するキルアの言葉に、私も前のめりになって聞く。



「試合は明日からじゃない…今日からだ
これから2週間、朝は食べて、昼は野菜とおかず、夜は断食を続ける
それから、お腹の空いてる夜にあえて筋トレを行って脂肪の燃焼を高める」

『あの、私そこまでしなくても平均的なたいじゅ、』

「スタイルのいいヒソカの隣を…歩くんだぞ、A」



……私は、キルアのその言葉に、落ちた。



―…ちゃぽん…



『…お風呂は最低30分は浸かる…ね』



キルアの居ない浴室で1人、彼からもらったルールを見返す。



『風呂から上がったら、以下の柔軟を欠かさず、忘れないこと……
誰得だよ、こんな鬼畜運動』



パラパラ…とノートを捲って、その掟の多さにうえ、とえずいた。


…まぁ、でも。



『キルアがこんなに手伝ってくれてるし
平凡から、ちょっとは抜け出せるかもしれないし
ヒソカも、恥かかないで済むし』



頑張ろう。



火照った体を冷水で冷やし、その日はじっくりと寝た。

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