十三度目の、 ページ15
貴方side
ガタン、ゴトン。
新幹線特有の揺れに体を任せながら、むすっと窓を見る。
…ど う し て こ う な っ た ?
いやさ?
あれから私もちゃんとこの旅行の件に着いては唐突過ぎて無理って反対したんだよ?
だが、最終的には快斗について行かないと野宿するしかないという必殺技を放たれ、
そうこうしているうちに気が付いたら私は新幹線に乗っていた。
…あの悪魔が。
『…あーあ。』
次々と変わって行く景色を窓際で眺めながら、私はなお現実を受け止めきれずにいる。
その横では、快斗が美味しそうに先程買った駅弁を頬張っていた。
…てか、普通に食べてんのになんで頬にご飯粒が着くんだろう、こいつは。
前世からずっと疑問に思っているが、賢明にも私はそれを口に出さずにいた。
ギャグの力、恐るべし…。
「そういや、おめーと二人で旅行とかしたこと無かったな。」
『うん、そうだネ(棒)
…てか、これってどこに行ってんの?』
「学問の神様んとこ。ガイドブック買ってあるから安心しとけ」
『うん、何一つ安心出来ないや。』
ちなみに、今回のチケット代も旅費も宿泊費も、全て横に居るバ快斗の財布から出されている。
気にするなとは言われているけど、私のプライドに掛けても絶対返済せねば。
そんなくだらない使命感を感じていると、目の前にみかんが出された。
「食う?」
『あ、どもー。』
みかんを受け取り、無言で皮を剥いていく。
「んだよ、元気ねーな。
まさかと思うけど乗り気じゃねえの?」
『逆に乗り気に見えてたの?』
「旅行は楽しんだもん勝ちだろ、楽しめよ。
あの天下の怪盗キッド様を独り占め出来るんだぜ?」
『旅行と言うよりも拉致だと思うんだけどなぁ、あっれれえ。』
ほぼ棒読みでそう言い捨て、止まっていた手を使って再び無言でみかんの皮を剥く。
…子供の手だとどうもやりずらいな。
剥いたみかんを食べ終え、横に居る悪魔を見る。
その悪魔は呑気にタブレットでニュースを見ていた。
なんとまぁ、人を拉致しておいて随分と良い身分だなこいつ。
そんな汚い言葉が一瞬脳内を過ぎったが、ぶんぶんと頭を振って打ち消した。
行けない、いけない。
7歳の純粋な子供はそんな事考えてはならないのだよ、はっはっは。
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作者名:除草剤 x他2人 | 作成日時:2019年6月8日 9時