176羽 ページ45
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及川の超ロングセットアップ、それに飛び込んできていた岩泉がボールをたたいた。想像もできない不意をつかれた攻撃、誰も反応できないかと思われたそのボール――しかしドンピシャの位置で構えていた澤村が腕にあてる。
拾ったか、そう思われたがボールは大きく後ろにそれた。
「くそっ!」澤村の悔しそうな声が届く。けれど、そのコート外へ落ちようとしているボールに田中は喰らいついていた。
「ラストォ!!」
ボールを片手であげて全力で叫ぶ田中。彼の返したボールは山なりに青城コートへかえっていく。「チャンスボール!」と青城が声を上げただが、Aはそのボールの軌道をみて叫んだ。
「打てる、旭さん!!」
東峰はその言葉に反応し飛び出す。ほとんどエンドラインの位置から振り向きざまにスパイクをたたきつけた。
それを渡が拾うも、ボールは上へ跳ばずネットに当たる。そのままコーチへ落ちかけたそのボールは京谷によってぎりぎりのところで拾われた。
「叩け影山!」
影山がダイレクトでネット際のボールを叩くも、金田一によってブロックされる。ボールが叩き落された位置にちょうど菅原がおり、頭にボールを受けた。しかしバレーは頭だってどこだって、上がればそれでいい。
日向が十分な助走の幅を確保する。その異様な存在感にAは息を呑んだ。
「よこせぇぇ!!」
叫びながら日向が走り出す。影山はそんな日向の姿を確認してトスを送った。最高の高さ、タイミング、スピードの美しいトスを。
ブロックは三枚。それでも日向は目は瞑らない。それでは勝てないことは幾多の苦い経験で理解した。そして、乗り越えるために毎日努力してきた。
「いけ!日向!!」
金田一の指先――そこに狙いをつける。上向きに打たれた日向のスパイクは金田一の指先にあたって弾けた。
―傘の先端から……溜まった水を、叩き落とす。―
けれども及川は反応し、レシーブに構えている。
及川の腕へと真っ直ぐ向かったボール。そのボールはブロックに当たっていたために特殊な回転がかかっていた。腕に収束することはなく、遠く後方へはじけ飛ぶ。カバーに入ることも許さないほど、遠くへ。
スローモーションのように、ボールは静かにコート外へと落ちた。
ピッと、無機質な笛の音。同時にめくられる得点ボード。それらは試合が終わったことを告げ、同時に――。
「よっしゃあああ!!!!」
烏野の勝利と青城の敗北を告げた。
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もち - 初コメ失礼します。あの、セットポイントとマッチポイントの違いはご存知ですか?所々間違っています。凄腕マネという設定なら、そういうのはキチンとされた方が良いのでは…? (2020年8月9日 13時) (レス) id: 9c382bbadc (このIDを非表示/違反報告)
美衣(プロフ) - 135話で、角川の長身選手の身長が1ヶ所だけ間違えて書いてあります。 (2019年8月24日 11時) (レス) id: 17d30bab42 (このIDを非表示/違反報告)
魂祐 - 黄金川が正しいです (2017年6月6日 11時) (レス) id: f41f51613c (このIDを非表示/違反報告)
rina(プロフ) - 面白いです!155羽はどこに行ったんですか? (2017年1月27日 23時) (レス) id: b2365399a8 (このIDを非表示/違反報告)
赤兎リエ輔 - 雪氷さん» 楽しみに……!ありがとうございます!光栄でござる(*´`)← 好きと言ってもらえて嬉しいです!投票もコメントもありがとうございます!! (2016年8月9日 23時) (レス) id: 9a5c590feb (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:赤兎リエ輔 | 作者ホームページ:http://nekomoti
作成日時:2016年8月4日 4時