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連れ出されて初めに言われた言葉
「翔くんってしつこいよね」
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翔「…は？」
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智くんは「ふぅ」と息を吐いた。
白い息が舞い上がった。寒いんだ。
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智「これは俺のね、もう前の話なんだけど」
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「ずっと前から好きな人がいてさ」
「その人に好きだって言えなかった」
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初めて聞いた。
智くんが人を想っていた話を。
智くんの好きな人の事を。
…智くんもそういう体験してんのだ、って。ちょっと思った。ごめん。
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翔「…それで、どうなったの」
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すぅ、って
寒くて冷たい息を吸って
「死んじゃった」
って。
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智「もっと早く言えてればその間の年月を違う形で過ごせたのにね」
智「後悔しても遅いんだよ、翔くん」
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なんでだろう。
この人に言われると全てが安心する。
「俺が間違ってたんだ」って素直に思わせられる。
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翔「…俺、いいのかな」
智「もう決心ついた顔してっけど？」
翔「ふは、バレちゃった」
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「俺達もいい大人だ。もう充分だよ」
って言ってくれたから
蓋をしたはずの鍋がグツグツと溢れる。
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翔「ありがとう、智くん」
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「まぁこの話は90歳の実の婆ちゃんの話なんだけど」
って智くんが言ったのは聞こえなかった。
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作者名：うわぐつ | 作成日時：2018年2月9日 14時
