episode.66 ページ16
「え？」
私に…電話？
訳が分からないままゲームを一旦中断し、
黒蘭から手渡されたスマホを恐る恐る耳に押し当てる。
何故か背筋がぞわりと粟立った。
「…お電話代わりました、Aです」
一応名乗るが、実のところ、私に電話してくる人物なんて、しかも黒蘭伝いに連絡を寄越す人物なんて、一人しか思い当たらない。
果たして、その予想は正しかった。
「……A」
私の名前を呼ぶ低い声は、紛れもなく米津さんのものだ。
今まで耳にしたこともないほど冷然としたその声は、普段の米津さんとは打って変わって、焦りや怒りといったマイナスの感情を滲ませている。
「…はい」
叱られている子供のように短く答えると、
暫くの間、沈黙が続いた。
そして。
「何してんの？」
この上なく冷たい声が、電話越しに私を貫いた。
「俺が自室に行ってる間に、無断で家出なんかして。
そんなに俺の側に居るのが苦痛なら、どうぞ何処へでもお行きくださいよ」
…あれ？
もしかして、いや、もしかしなくとも。
米津さん、何か勘違いしてる…！
このままじゃまずい。
この調子だと、私が米津さんの事を嫌って勝手に家を出て行った、そんな風に思われっぱなしになる。
「ち、違います…！そもそも、私は家出したんじゃなくて――」
「もういいから」
弁解しようと紡いだ言葉は、米津さんによって呆気なく阻まれた。
「意味のない言い訳なんて、形のない言葉なんて、Aの口からは聞きたくなかった。見損なったよ。もう、俺の元に戻ってこようだなんて思わないで」
拒絶。
米津さんは、私を拒んだ。
そんなの、勘違いにも程がある。
私は家出をしたんじゃない。黒蘭に呼ばれて、彼の家に行ったんだ。
それなのに、こんなことって…。
あまりに悲しくて。
自分を救ってくれた米津さんに拒絶されたのが、辛くて辛くて堪らなくて。
気がつけば、私は泣いていた。
米津さんとの通話はそのままに、みっともなく嗚咽を漏らしていた。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 83人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ぽち - 更新ありがとうございます(*･ω･)*_ _)ﾍﾟｺﾘ (2019年9月23日 19時) (
レス) id: d5f649f093 (このIDを非表示/違反報告)
碧穂(??)(プロフ) - ぽちさん» コメントありがとうございます！更新が度々遅くなってしまい、申し訳ございません…。゜(´∩ω∩｀)゜。ご期待に応えられるよう頑張っていきますので、これからもお付き合いいただけると嬉しいです！ (2019年8月7日 23時) (レス) id: deb8b25063 (このIDを非表示/違反報告)
ぽち - 更新、待ってました！嬉しいです！ありがとうございます(*^^*)これからも応援してます！ (2019年8月7日 21時) (レス) id: d5f649f093 (このIDを非表示/違反報告)
碧穂(??)(プロフ) - ぽちさん» 再びコメントありがとうございます！いえいえ、お気になさらず！これからもaventure.をお楽しみいただけますと幸いです。 (2019年7月9日 18時) (レス) id: deb8b25063 (このIDを非表示/違反報告)
ぽち - こんばんは。この作品、本当に好きなんですが、ちょっと訳があってお気に入り登録できないんです…ごめんなさい。でも、星はたくさんつけて投票しました！登録できなくてごめんなさいm(_ _;)m (2019年7月6日 21時) (レス) id: d5f649f093 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：朔月α・碧穂 x他1人 | 作者ホームページ：http://uranai.nosv.org/u.php/hp/adoa59721/
作成日時：2019年4月3日 21時
