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「「ねえ」」
「今日三回目じゃーん。偶然すごくね？」
「Aさ、シンクロニシティって知ってる？」
「知らん……あ、こないだ倫理でやったやつ？」
「そ。自分が思い浮かべてたことが、あまりに偶然で起こったとは思えないくらいの確率で当たったりするやつ」
「それがどうしたんだね、蘭たんくんよ」
「長く一緒にいると考え方とか話し方とか似るっていうじゃん。
俺らってさ、それじゃね？」
「確かに。
蘭たんの考えそうなこと、わりかし分かるしな」
「じゃあさ。
俺の好きなタイプ、本当に分かんない？」
ぱちん、と消された教室の電気。
片付けたスクールバッグを机に乗せて、一歩こっちに近づいて来る彼。
「知らんて。どんなん？」
「俺と笑いのツボ一緒で、隣にいて心地よくて、高校最後の夏なのに彼氏も作らず補修受けてる可哀想なやつ」
「……まじ？」
たっぷりの沈黙。
機能を止めた脳味噌。
上がる体温と窓越しの街明かりが、私たちの横顔をオレンジに照らす。
「俺、これでもめっちゃ緊張してんですけど」
「なんなら私も緊張してきたんだけど」
「なんそれ。
……急かすつもり、なかったんだけど。
返事、聞きたい」
いつになく真剣な表情に思わず口角が上がるのが抑えられなくなって、蘭たんの手を取って教室の外に駆け出した。
「ちょ、なん、どしたん！？」
「蘭たんおっそい！はやく！」
目指すは正門、階段前。
下駄箱に駆け込んで、靴を履き替えて、また彼の手を取って宵闇に飛び出す。
「間に合った！」
「、は、ちょ、俺体力無いの知ってんじゃん！？」
「ほら、あっち見て！右の方！！」
高台に位置するこの高校は遮るものがないので、ある種、特等席だった。
空に浮かぶ光の華。
繋いだままの手に、ぎゅっと力を込めた。
「彼女と花火、見れて良かったね！！！」
「おま、まじ、素直じゃねえなあ」
「蘭たんからちゃんと言われてないし。おあいこ」
「ちゃんとって……ああ、そういうこと？」
赤、緑、黄色。
蘭たんの瞳が色とりどりに染まるこの光景を、きっと忘れないだろう。
「Aが、好き。
俺と付き合ってください」
シンクロニシティ / HY+BIGMAMA
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作者名：椎名 | 作者ホームページ：https://nanos.jp/adminshena/
作成日時：2021年9月15日 21時
