【n.p.l】朝焼 (ページ40)

今日:9 hit、昨日:6 hit、合計:12,422 hit

真夜中のレモネード / S ページ40

.

　配信の終了ボタンを押して一息つく。
　日課のゲーム配信、反応は上々。
　グループ活動も上手くいってるし……それに。
　ぐるりと部屋を見渡す。一軒家ではない、マンションの一室。
　先月から大好きな彼女と一緒に暮らし始めた嬉しさから、思わずにまにまと頬が緩んでしまった。
　可愛い可愛いAちゃんはもう寝てしまっているだろうか。
　そう思い立って自室の扉に手をかける。

　「Aちゃーん、まだ起きて…る……？」

　そこにはソファに座らずに床で膝を抱えて、ぽろぽろと涙をこぼす彼女の姿。
　一瞬呆然と立ち尽くし、慌てて駆け寄った。

　「Aちゃんどないした！？」

　「ぁ……すぎるさん、ごめんなさい。なんでもないんです」

　「なんでもないわけあらへんがな！」

　「少し、具合悪くて」

　そう呟く彼女のおでこにそっと手を当てる。
　すべすべの肌はいつも通りで、特に熱が高いことは無さそうだ。なら、どうして。

　「なあ、どしたん？正直に言ってえや」

　「ちょっとだけ、寂しくなったんです。
　あ！でも、配信聞いてて楽しかったですし、不満とか何もないんです！！」

　慌てふためいたように身体の前で手を振る彼女。
　確かに横に置いた画面は先程まで自信が映していたYouTubeのチャンネル画面になっていた。
　具合が悪くて、寂しくて、なんやろ。
　風邪を引いた日みたいな感覚なんかな。
　でもこの感じ、実家で覚えがある。……あ。
　
　
　「すぎるさん、どこ行くんですか？」

　「どこも行かんよ。
　すぐ戻ってくるから、ちょお待っとってな？」

　台所に向かって、冷蔵庫を開けて。
　普段甘いものはあまり好きじゃないAちゃんだけど、こういう時はええんやないやろか。
　温かくなってほかほかになったマグカップと、棚からブランケットを拾って彼女の元へ戻る。

　「ほら、あっついから気を付けて飲むんやで」
　

　「ありがとう、ございます」

　手渡したのは蜂蜜が少しだけ入った温かいレモネード。
　ブランケットを膝にかけてあげて、後ろからそっと抱き締めてお腹に手を当てた。