【n.p.l】朝焼 (ページ27)

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午前0時の狭間で / 8 ページ27

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　靴紐をしっかり締めて玄関の扉に手をかける。
　茹だるような熱気は影を潜め、辺りには虫の声と時たま走る車の音だけが響いている。
　思っていたよりも寒くはない。
　ウィンドブレーカーのポケットからスマホを取り出して、適当なプレイリストを再生しイヤホンを耳に付ける。
　今日と明日の間。
　通りに通行人の影はなく、耳から流れる音に身を任せて走り出せばミュージックビデオの中にいるみたいだ。

　夜、なかなか寝付けなくなったのは1ヶ月前。
　打開策として数日前から、当てもなくランニングをするようになった。
　1時間も走ってシャワーを浴び、無理矢理誤魔化すように布団に潜る生活。
　今日もこうして当て所なく夜道を走る。
　危ない行為なのかもしれないが、一応人通りの多い道を選んで走っているので大丈夫であろう。

　そうしていつものコースを走っていると、進行方向に工事中の看板が出ているのが目に入った。
　どうせ気分転換なんだし、違う道を走ってみるのもいいだろう。
　ランニング中に違った景色を見るのもまた一興だ。
　そう考えながら信号を初めて左に渡ってみると、思いの外開けた道に出てきたらしい。
　きっと昼間は犬を連れたご婦人や、子供連れで賑わっているのだろう。
　今は誰もいない広々とした公園に想いを馳せながらTシャツの胸元で汗を拭う。

　そうして走っていると、随分と背の高い男性に走り抜かれた。
　あまりこの時間帯に走っている人が少ないからか、抜き際に会釈をされたのでこちらも返す。
　随分ペースが早いようで、しばらく走れば姿は見えなくなっていった。
　もう折り返し地点にしていいだろう。
　左折して、ぐるっと戻り家に着く。
　そうやって無理矢理1日を終わらせるのだ。