【n.p.l】朝焼 (ページ20)

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正解などないな / 3 ページ20

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　ほう、と熱を持った吐息が溢れた。
　胸を上下させながら意識して呼吸をする。
　今しがた行われていた情事を思い起こさせる男女の香りと、私のものじゃないシャンプーの残り香が鼻腔を掠めた。

　サイドボードに置いていた煙草と安物のライターを引っ掴み、着古したパーカーを被る。

　「あれ、もう行っちゃうんですか？寂しいなぁ」

　するり。
　ゆったりとした丈の裾からするすると手が入り込み、節榑だった指がおへその周りをまろく撫でる。

　「嘘ばっかり」

　「ひどいなあ、俺Aちゃんに嘘なんか吐いたことないですよ？」

　そう言って頬に唇を寄せ、リップ音と共に手元にあった紙箱は彼の手によって奪われてしまった。

　「いつも終わったらすぐ吸って、いつの間にか帰っちゃうじゃん。
　ね。泊まっていけばいいのに」

　にたりと笑いながら太腿に手を這わせる。
　この男はいつもそうだ。
　甘い言葉を囁いて、希望通りの反応を見せて、望むであろう言葉をかけて、着実に自分の元に落とす。

　そうやって今まで、一体どれだけの人間を手中に収めてきたのだろう。
　彼にとってこの一連の作業は、クリアしたら最後、見向きもしなくなるゲームと同じだ。