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STORY 58 ページ8

驚いてゆめまるさんに顔を向けた私の瞳からは愛する人の名前を聞いた瞬間、無意識に涙が零れだしてしまっていた。

「ごめんなさい…」

慌てて掌で涙を拭う私にゆめまるさんが優しい口調で語り始めた。

「辛いよなぁ、大好きな人と別れなきゃいけないんだもんな。身分の違うモン同士の恋は苦しいだけだよな」
「…」
「俺な、月子が好きなんだ」

思いもしなかった告白に顔を上げると、ゆめまるさんがとても苦しそうな表情を浮かべていた。

「まだあいつが遊女になったばかりの頃は、ほら前Aちゃん言ってただろ?シロツメ草咲いてる丘、あそこによく行って二人で並んで遊郭の町並みを眺めてた。俺は一緒にいるだけで、あいつの笑顔を見てるだけでそれだけですげえ幸せだった…」
「ゆめまるさん…」
「だけどあいつはいつの間にかここの宿の一番人気の遊女になってて、俺はただの使用人で。本当は身請けしてやりたいんだ、でもそんな力俺にはない。俺じゃあ、あいつのこと幸せにしてやれない」
「そんなこと!」
「分かってるんだ、俺と一緒になってもあいつは幸せになれない。でもどうしても気持ち押さえられないんだ。俺、あいつが、月子が好きで好きでどうしようもないんだ…」

ゆめまるさんの月子さんへの想いが痛いほど伝わってくる。
二人はこんなに愛し合っているというのに、なぜ当たり前のように心を通わすことができないのだろう。
そう思うととても虚しくて、やり場のない思いに胸が苦しくなった。


「Aっ‼」

その声にハッとして顔を向けた私の瞳がその人の姿を捕らえた時、体が固まって動かない。

「てつやさん…」
「A、こっち来いっ!」
「てつやさん⁈待って、どうして…!」

私の言葉も聞かず、てつやさんは有無を言わさない口調と態度で腕を取るとその場から強引に私を連れ出した。





いつもの部屋へやってきて二人中へ入ると、てつやさんは乱暴に戸を閉め私の肩を強く掴んで自分の方へと無理矢理向けた。

「本気か?」
「…何がですか?」
「俺ともう会わないって、そんなことないよな?」

その言葉に私は顔を上げててつやさんと目を合わせたのと同時にはっきりと告げていた。

「本当です」
「A?」
「もうここへは来ないで下さい」
「…嘘だろ?」
「…」
「何があった、何かあったんだろ?誰かに何か言われたのか?なぁ、A⁈」

てつやさんの私の肩を掴む力がまた少し強くなった。

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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました! (2021年4月27日 21時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます!この作品に出会えて良かったです! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました! (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました!とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:かえで | 作成日時:2018年3月6日 17時

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