STORY 81 ページ31
「なんか天気も祝福してるみたいだよな、すげぇいい天気だ」
ゆめまるさんの言葉に窓の外に視線を向けると、そこには本当に雲ひとつない綺麗な青空が広がっていた。
しばらくは何となくそんな風景を眺めていて、ある時雲が二つ寄り添って流れていくのが見えた。
その光景になぜかふと笑みが零れる。
てつやさんも今頃はお式の準備しているのかな。
それとももう祝言が執り行われているのかもしれない。
私は窓の外から視線を逸らすと静かに瞳を伏せていた。
「なんか急に外騒がしくないか?」
今、宿の中は祝言の準備に追われていて確かに朝から慌しかったけれど。
何だか突然外が一際騒がしくなったような気がする。
それをいち早く察したゆめまるさんがここにいる私達にそんな言葉を投げかけてきた。
「そうね、準備で相当忙しいんじゃないの?」
「いや、なんかそういう雰囲気とちょっと違うような気が…」
ゆめまるさんと月子さんが会話を交わしていた時、廊下を誰かが駆けて来る大きな音がして。
それはやがてこの部屋の前でぴたりと止まると、その直後部屋の戸が大きく開かれた。
「Aっっ‼」
一瞬何が起こったのか分からず、目の前に突然現れたその人のことを信じられない気持ちで私はただ凝視していた。
驚きのあまり言葉も出てこない。
「…てつや、さん?」
やっと口を出た最初の言葉は、私の目の前にいる心から愛した人の名前だった。
肩で息をしながらも一呼吸置くと、てつやさんはここにいる私達がもっと驚くことを叫んだ。
「A、頼む!俺と一緒にここから逃げてくれ‼」
「…え」
てつやさんの叫びに私はその意味を理解するのに必死だった。
あまりにも突然過ぎていったいどうしたらいいのか…
今のこの状態に訳が分からなくなっていて、困惑して何も答えられずにいるとてつやさんは再び私に向かって叫び続ける。
「お前の為だったら何もかも捨ててやる!頼むA、俺の傍にずっといてくれ!誰でもない…俺がこの先一緒にいたいのは、一番必要なのはお前なんだA‼」
その想いが私の胸に痛いぐらいに響いていた。
ただじっとてつやさんのことを見つめていた瞳には涙が溢れ出す。
でも私は心に固く誓っていた。
一生、りょうさんの傍にいるのだと。
たくさんの愛情を注いでくれたりょうさんのことを、今さら裏切るなんて私にはできない。
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かえで(プロフ) - あいまるさん» 当時、悩みながら書いた作品だったのですがこうして今読んで頂けたことが私にとっては最高に嬉しいです。勿体無いほどの言葉を本当にありがとうございました! (2021年4月27日 21時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
あいまる(プロフ) - もう、感動の一言につきます。思わず涙をこらえるページもありました。こんな作品を生み出していただいて、ありがとうございます!この作品に出会えて良かったです! (2021年4月26日 21時) (レス) id: 8885b9410d (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - りなさん» お気持ちだけ受け取ります、これからも無料でガンガン読んでやってくださいw有難いお言葉を本当にありがとうございました! (2018年11月13日 8時) (レス) id: 7b9a694418 (このIDを非表示/違反報告)
りな(プロフ) - すんばらしいです。。お金払って読みたいレベルです。。素敵なお話ありがとうございました^ ^ (2018年11月12日 0時) (レス) id: e2ead3d137 (このIDを非表示/違反報告)
かえで(プロフ) - オニク。さん» 有り難いお言葉をありがとうございました!とても励みになりました。 (2018年4月30日 14時) (レス) id: f1c141d7d3 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:かえで | 作成日時:2018年3月6日 17時